中高生が新商品開発に取り組む!起業につながる探究学習「スモールスタート」中間発表会 開催報告
2022年11月18日、中高生が起業につながる新商品開発に取り組む探究学習プログラム「スモールスタート」のオンライン中間発表会が開催されました。当日は全国から4校15チームが参加。生徒たちはこれまでに考えてきた新商品企画を発表しあい、他学校や社会人の方々と意見交換を行いました。
他校チームの発表や社会人の方々とのやりとりに刺激を受けながら、短時間でたくさん考え、自分たちのアイデアを掘り下げていく生徒たち。いったいどんな発表ややりとりがあったのでしょうか。
スモールスタートとは
「スモールスタート」は、探究学習プログラム「クエストエデュケーション」のプログラムコースのひとつ。生徒自らが日常生活のなかにビジネスの種を発見し、生徒同士で協力しながら、実現性にこだわって新商品を開発していきます。最先端の起業メソッドを活用した、ユニークかつ実現性の高い「新商品」のプランを提案するプログラムです。(詳細はこちら)
生徒の学びに伴走するサポーター
今回「スモールスタート」の中間発表会に社会人サポーターとして参加してくださった方々は、こちらの4名です。
・八木橋 パチ 昌也 さん(日本アイ・ビー・エム)
・小野 曜 さん(株式会社下ル上ル)
・塚本 恭之 さん(ナレッジワーカーズインスティテュート)
・臼井 清 さん(志事創業社)
彼らは世の中にハッと驚く種を見つける達人たち。「新商品を開発せよ!」という問いの真っ只中にいる生徒たちに寄り添いつつ、真摯に発表を聞いてくださいました。時にはシビアなコメントに、生徒たちもドキドキです。
生徒たちの考えた起業につながる「新商品企画」とは?
生徒たちは、どんな新商品企画を発表したのでしょうか?
「運動不足の人向け、運動が楽しくできるアプリ」明星中学校
たとえば大阪府の明星中学校のチーム「Boy with love」からは、運動不足の人のための、運動が楽しくできるアプリの提案がありました。
チーム:Boy with love(明星中学校・大阪)
<新商品プラン>
運動不足の人に贈る、運動が楽しくできるアプリ! 地域と連携してスタンプを貯めると商品と交換できます。自分の数値的変化と、アプリ利用者内で運動量の順位が出るなどモチベーションアップの仕掛けも。課題は既存のトレーニングアプリとの差別化。
発表後には、他校の生徒たちや社会人サポーターの方から質問や感想がとびかいます。たとえば臼井 清 さん(志事創業社)と生徒たちのあいだでは、このようなやりとりがありました。
<臼井さん質問>
臼井:貯めたスタンプと交換してもらえる景品はどんなものなの?
生徒:鶏むね肉やプロテインを考えています!
臼井:「地域と連携」とあったけれど、景品は地域とはあまり関係ないのかな。
生徒:体を鍛えている人がほしいものを想定しましたが…
臼井:「運動不足の人」ではなく?
生徒:・・・
臼井:もう一つ。これは「インセンティブ(成果報酬)」という言い方をするのですが、要は「ご褒美がほしいから運動する」タイプのアプリですよね。運動自体を楽しくさせる工夫は考えてないですか?
生徒:ゲーム形式にして全員を競わせたりして、楽しさを与えていきたいなと。
臼井:なるほど。順位が出るのは頑張れる要素で非常にいいですね。でもどうせ勝てない、とならないように、あとひと工夫ですね。
やりとりの後もこれで終わりではありません。発表へのコメントを受け、自分たちの企画について8分間、再検討する時間が設けられています。生徒たちはチームで考え、話し合い、再度全体に向けて新しい考えを共有しました。
<8分の再検討タイム後>
生徒:2つのコースを作ることを再検討しました。1つ目のコースは、もともと体を鍛えていて筋トレを楽しみたい人向けで、企業がスポンサーになってもらい、運動量に応じてポイントを貯めてプロテインや運動製品や、鶏むね肉と交換できます。
2つ目のコースは運動不足だけど、これから頑張って運動したい人向けです。ポイントで地域の特産品がもらえるようにします。
<最後に臼井さんより>
鶏むね肉、おじさん(私)も好きです(笑)。今みたいにコースを分けるのもすごくいいアイデアだと思いますね。「自分向けだ」と思ってもらえるし、商品化に近づいた気がします。運動嫌いの人にとって、運動そのものが面白いとか日常的になる工夫ってきっとアプリでできるはず。合わせて検討してもらえたら嬉しいです。
「小顔効果や認知症防止!噛む恩恵を得られるグミ」明星中学校
また、大阪府の明星中学校のチーム「Ganyu is God」からは、小顔効果や認知症防止など噛むことによる恩恵を得られるグミ「カミカミ中毒」の提案がありました。
チーム:Ganyu is God(明星中学校・大阪)
<新商品プラン>
人間、よく噛むことはとっても大事。提案する商品「カミカミ中毒」は、グミを固めてタコの吸盤のようにくっつき、いつでもどこでも噛めて、小顔効果、歯並び、肥満防止、表情筋がほぐれる、シャキシャキ喋れる、認知症の防止などの効果が。カミカミ効果で全世界を幸せに!
<臼井さん質問>
臼井:誰に、買ってもらいたいですか?
生徒:全世界の人々です! ちっちゃい子から認知症になるかもしれないおばあちゃんたちまで、すべての人に効果があるので、全世界の人々を対象としたものです。
臼井:もし全世界で売るんだったら、日本の100円の価値と、売る国での価値が違ってくるけれど、その辺はどう考えている?
生徒:そうですね、「カミカミ中毒」を作る工場がその国にありさえすれば、その国での適正な価格で販売できると思います。
臼井:全世界の人に売る場合と、日本の誰かに売りたいときでは、カミカミ中毒の訴えるポイントも変わってくるかもしれない。全世界の人にいいんですよと言われても、じゃあ私は買うのかな? この人に売りたいんですっていう理由がはっきりしていると、もっと買いたい気になると思いました。
<8分の再検討タイム後>
生徒:改善した点は、最初の2年間は子どもの健康目的として、また親自身の美容のために、子育て世代に買ってもらうためにまず日本で販売します。その後はアジアなどの国々に広げていき、さらに5年後には世界へ、というスケジュールを考えました。費用についてはもっと掘り下げていきたいです。
<最後に臼井さんより>
臼井:「全世界の人に届けたい」「誰もが使える」というのはすごくいい目標だと思います。ただお客さんは、「自分にぴったりかどうか」を一番気にするので、ターゲットに対して商品の魅力を答えられるようにしておいた方がいいかな。僕だったら、「カミカミ中毒」をストレス解消用に使いたいです!
「エレベーターの待ち時間のイライラ解消システム」CLARK NEXT Tokyo
また、東京都のCLARK NEXT Tokyoのチーム「略して獺」からは、エレベーター待ち時間のイライラを解消するシステムの提案がありました。
チーム:略して獺(CLARK NEXT Tokyo・東京)
<新商品プラン>
エレベーターの待ち時間のイライラを解消! 利用集中時間帯の効率を追求するシステムと同時に、利用者間で会話ができるシステムを使って、車椅子の方などの優先ルールの工夫を考えます。
<臼井さんコメント>
臼井:目の付け所がすごく日常的で逆にいいですね。ただおそらく、待ち時間自体を短くするシステムはすでに開発されていると思います。イライラを解消するための別の視点、たとえばディズニーランドでは待ち時間にも世界観があって、ミッキーに会えて楽しいじゃないですか? 一生懸命待ち時間を減らす方法だけ考えるのではなくて、違う発想で捉えると面白くなるんじゃないかなって、思いました。
<8分の再検討タイム後…>
生徒:違う発想を、のアドバイスから、なにかアプリを作ってみたり、エレベーターの予約というところでは遠隔操作ができる仕組みをも面白いんじゃないかと今、考えてみました。
社会人サポーターから生徒のみなさんへ
最後に、社会人サポーターから、生徒のみなさんへのメッセージです。
臼井 清 さん(志事創業社)
頭で論理的に考えるだけでなく、面白いなとか、変てこりんだなという、自分の素直な気持ちを起点にすることも大事にして欲しいです。アイデアが膨らんできたら、これを一緒に面白がってくれる人は誰だろう、と探してみてください。
小野 曜 さん(株式会社下ル上ル)
プログラムの方向性は大きく2つ。世界を広げることを主目的にするのか、それともガチのビジネスを追求するのか。ガチのビジネスは結構厳しい話になるので(笑)今日は皆さんには、「世界を広げる」を楽しんでもらいたくてコメントしました。
塚本 恭之 さん(ナレッジワーカーズインスティテュート)
「楽しいときは、時間がゆったり測れる時計を作りたい」というチームの発表があり、非常に面白いなと思いました。実は私はカシオ計算機出身で、G-SHOCKという時計があるんですが、そもそも壊れない時計を作ってみようと、結構やけくそ的なアイデアから生まれたんです。そんな時計作れるわけないといわれてたものが、延べ1億個以上を売っています。皆さんもこのまま自信を持って進んでください!
八木橋 パチ 昌也 さん(日本アイ・ビー・エム)
投資ゲームやVRゲームのアイデアが出て、みんなで話しているうちに、単なる金儲けのための投資ゲームではなくて、いい体験をちゃんとしたいよね、いいものがちゃんとみんなに行き渡るようにして、困ってる人が助かるようにしてほしいねと、そんな話が出てきて、それはオレにとってはなんかすごくいい流れ! 今までのビジネスのあり方の延長線上でみんなが同じようにやる必要はひとつもないです。何に価値を見出して、何にお金を使うかは、今のオレたちの世代じゃなくて、大人になったみんなが決めればいい。みんなの未来はお金だけじゃない「価値」に繋がるかもしれないな、と思いました。
最後に
生徒のみなさん、社会人サポーターのみなさん、本当にありがとうございました。生徒のみなさんにとって、今回のオンラインイベントがたくさん挑戦して、刺激を受けて、何かを持ち帰ってもらえる場になっていたら嬉しいです。
「スモールスタート」中間発表会は 教育と探求社 の学校コーディネーターが企画進行を担当しています。そのメンバーがこちら!
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