探究学習のテーマをどう決める?問いをつくるときに意識すべき3つのこと

探究学習とは

教育と探求社 学校コーディネーターの佐藤 瞬です。前回の記事では、探究学習の特徴である「答えのない問いに向き合うこと」についてお話しました。自分なりの答えを創り出していくことで、生徒は自らの可能性に気がつくことができます。

さて、ここで気になるのが、どのようにテーマを設定するか、どんな問いで授業をはじめるかということではないでしょうか。実際に、私が学校現場で授業に立ち会う際にもご相談をいただく事が多く、ここでつまづかれているケースもよく見かけます。

探究学習のテーマとしては、「働くとはどういうことか」「生きるとはどういうことか」といった哲学的なものから、「新商品やサービスを作ろう」「企画をつくろう」といった企業で扱われるようなもの、さらには「社会課題を解決しよう」「地域の活性化について考えよう」といった社会的な課題を考えるものなど、様々な問いが考えられます。生徒がついつい取組みたくなってしまう、そして考えているうちに新たな自分にに気づいていく問いにするためには、どのようなことを意識すればよいでしょう。

今回は、探究学習のテーマをどのように決めるか、問いをつくるときに意識すべき3つのことについてお話します。

▼「主体的・対話的で深い学び」を実現するための探究学習
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探究学習における「テーマ」と「問い」の違い

探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。

はじめに、探究学習における「テーマ」と「問い」について明確にしておきましょう。

「テーマ」というのは、「企業」「進路」「社会課題」「SDGs」といった探求を進めていく上での方向性を指し示すような的の機能を果たすものです。方向性を示すものであるため、テーマを決めることは探求を進める上で必要ですが、しかしテーマを決めただけではうまく探求を進めることはできません。

例えば「SDGs」をテーマとした場合、ただ「SDGsについて考えよう」というだけでは、そこから何か自分なりの答えを見出したり、新しい考えが創出されるのは難しいでしょう。テーマを決めたら、それをそのまま提示するというだけではなかなかうまくいかないのです。

そこで必要となるのが、「問い」です。

「問い」とは、テーマにひも付きながら具体的な探求を進めていくための手がかりの機能を果たすものです。この手がかりがあることによって、自分のこと、社会のこと、世界のことについて探求を進めていくことが可能になります。つまり、「問い」を作ることによって、探求を駆動させることができるのです。

「SDGsについて考えよう」だけでは、テーマを提示しているだけとなり、探求を進めるには不十分かもしれませんが、そこにSDGsについて考えたくなるような「問い」を設定すれば、探求を駆動させていくことができます。

探究学習で「問い」をつくるとき意識すべき3つのポイント

さて、そのような「問い」を設定するときには、どうすればよいでしょうか。

まずは自分に問いかけてみるといいかもしれません。「どんなことを聞かれたら、ついSDGsについて考えたくなるだろうか」というように。

そして問いを作るときには、下記の3つのポイントを意識しましょう。
生徒たちがついやる気になったり、夢中になって考えたり、自らの考えを深めていく。そんな「問い」を作るためのポイントです。

1:気軽に考えてみようと思えるくらい簡単か?(入口の簡単さ)
2:どんな答えも答えになりうる懐の広さがあるか?(解釈の多様性)
3:追求しようと思えばどこまでも追求できる深さがあるか?(深掘りの可能性)

1:気軽に考えてみようと思えるくらい簡単か?(入口の簡単さ)

探究学習のテーマをどう決める?問いをつくるときに意識すべき3つのこと

1つ目のポイントは、気軽に考えてみようと思えるくらい、簡単な問いかどうか?ということです。

問いが抽象的なものや哲学的なものであると、考えるのがつらかったり、探究学習が進まなくなってしまう場合もあります。

例えば、いきなり「生きるとは何か」と問われたら。
そういうことを考えるのが楽しいという生徒もいますが、普段あまり考えていないことに、とまどってしまったり、難しいと感じることも少なくありません。

そのため、まず問いを設定するときには、うっかり考えたくなってしまうような気軽な問いから始まっていくこと。そうしていくうちに、「生きるとは何か」という自分自身の価値観に、いつのまにかたどりつくこともできるでしょう。

例えば、私たちのある探究学習プログラム(*)では、「人がより良く生きるための新サービスを提案せよ」「一人ひとりの幸せと共によりよい社会を実現する新商品を提案せよ」というように、企業からのミッションという形でテーマを設定しています。

「より良く生きるとはどういうことか」「幸せとはなにか」といったこのような内容は抽象度が高く、授業のはじめに提示されたらもしかすると関心を持てないかもしれません。しかしながら、この授業では最初に自分でインターン先の企業を選び、企業の一員としてアンケートを実施するなど、生徒たちは企業インターンとしての物語を歩んできています。

最初に向き合う問いは、誰しもが意見をもっており、考えやすい簡単なものから始めること。階段をひとつずつあがるように、ステップをつくっていくことを意識してみてください。

(*)探究学習プログラム「クエストエデュケーション」の企業探究コース「コーポレートアクセス」

2:どんな答えも答えになりうる懐の広さがあるか?(解釈の多様性)

探究学習のテーマをどう決める?問いをつくるときに意識すべき3つのこと

2つ目のポイントは、どんな答えも答えになりうるくらい懐の広さがある問いか?ということです。つまり、多様性ある解釈ができることが重要となります。

このポイントが考慮されないと、結局は答えのある問いになってしまい、答え探しゲームが始まってしまいます。例えば、「卒業式にどんな態度で臨みたいですか」という問いは、どうでしょう。「礼儀正しく」とか「真面目に」といった答えがあるのではないか、と感じさせるこのような問いは、解釈の多様性に開かれているとはいえません。

「どんな答えであっても答えになるような問い」となっていることがポイントです。例えば、「本当にやりたい卒業式とは」という問いであれば、同じ卒業式についてであっても、先ほどの問いよりもあらゆる答えに開かれているように感じられます。

多くの答えを許容できる問いは、探究学習が本来もっている、自分で答えを作り出していくこと、自分の可能性を発見していくことを実現してくれるでしょう。

3:追求しようと思えばどこまでも追求できる深さがあるか?(深掘りの可能性)

探究学習のテーマをどう決める?問いをつくるときに意識すべき3つのこと

3つ目のポイントは、追及しようと思えば深掘りできる可能性をもっている問いであるか?ということです。

簡単に答えがでてしまうような問い、すぐに納得ができてしまいそうな問いにしてしまうと、そこで探求が止まってしまいます。

例えば、「小学校教員のなり方とは」といった問いは、制度や規則によってすでに決まっている部分が多いため、自分なりの答えを探求していく幅はかなり狭い問いになってしまいます。生徒自身の内側ではなく、外側に答えがあることを想定している問いについては、調べ学習には向いていますが、探究学習を進めていく上では難しい側面があります。なぜなら、新しい自分の可能性の発見には至らず、自分がもっていた意見を抽出しただけで終わってしまうからです。自分の今持っている意見以上のものを追求していくような問いがあることで、より深く追求していくことができます。

例えば、「地域にとっての宝物とは何か」との問いは、何をもって宝物とするのか、その価値はなぜ大切なのか、その地域らしさとは何かといったように、問いを派生させてどんどんと深掘って行くことができます。
そうした深掘りの可能性を担保していく問いを設定することによって、この問いに向き合うまでは考えてもみなかった自分の可能性へと気づくことができるのです。

まとめ

以上、みてきたように、①簡単についうっかり考えてしまい、②どんな答えも許容され、③どんどん深めていくことができる問いが、探究学習を進めていく問いとして大切なポイントとなります。

「どんな問いがあると、より深い探求となっていくのか」は、私たちにとってまさに深めがいのある問いです。これにも唯一の答えはありません。場所、雰囲気、関係性などによっても大きく変化します。この問いを探求し続けることが、学びの場を作っていく人の専門性だと思っています。そのことが私自身の新しい可能性の発見の場となることにもつながります。

ぜひ今回説明した3つのポイントを意識しつつ、よりよい「問い」の探求を進めてみてください。

また、探究学習のテーマをどうするか、問いを考えている場合には、無料で体験できる探究学習プログラム教材「ソーシャルチェンジ・ファースト!」が参考になるかもしれません。探究学習に使える16種類の問いが用意されていますので、ご活用いただけますと幸いです。

「ソーシャルチェンジ・ファースト!」

次回は、生徒が意見を言える安心安全な場の作り方についてお話します。

探究学習の進め方について、お気軽にご相談ください。教育と探求社の学校コーディネーターにご相談いただく事が可能です。

学校コーディネーター 佐藤 瞬

上智大学大学院総合人間科学研究科教育学専攻博士前期課程修了。大学院在学中に、青年海外協力隊として中米・ベリーズに小学校教員として派遣。2年間の勤務後に、公立...

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