探究学習で使えるテーマ例を7つ紹介!問いに注目した、生徒が考えたくなるテーマ作りとは?
「学校で探究授業を担当することになったけど、テーマは何にしよう…?」「どんなテーマだったら、生徒が楽しく取り組んでくれるだろう?」
探究学習の授業を行う際、具体的なテーマに悩んでいる先生方も多いと思います。実際、探究学習を円滑に進めるために、テーマ決めはとても重要です。
そこで今回は、「企業から出されるテーマ」「SDGsに関するテーマ」「お金に関するテーマ」など、幅広い分野からおすすめのテーマを7つ紹介します!
さらに、テーマを決めるだけではなく、具体的に探求を進めていくために重要となる「問い」の設定についても触れ、テーマに基づいた探究学習がより円滑に進むためのポイントを解説します。
全国の小学校・中学校・高校で働く先生方にとって、テーマ決めの悩みを解決する一助になれれば幸いです。
探究学習のテーマ例
①企業から出されるテーマ
探究学習といっても、学校内のリソースだけで完結する必要はありません。学校外の企業と連携し、企業の方からテーマを提示してもらう方法があります。
実際に社会で働いている企業の方から出されるテーマは、今の社会を的確に捉えたものも多く、生徒が将来働く上でも参考になることが多いです。
さらに、企業の方がテーマの提示をするだけでなく、その後の探究活動において、生徒にアドバイスをしたり、フィードバックを行ったりすることで、より充実した内容にすることも可能です。
例えば、ITサービスを展開する”富士通”が、過去に探究学習プログラムで出したテーマ事例は、「思いもよらぬものが繋がることで、生きる歓びが溢れ出す、新サービスを提案せよ!」でした。
このテーマを出されたある高校生は、AI技術が画期的な進歩を遂げる中、人間にしか叶えられない「生きる歓び」とは何かについて考えたり、さまざまなものがインターネットによって繋がるIoT技術を用いて、何と何を繋げることができれば面白いを議論しあったりしたようです。
また、自然を活かしたアウトドアパークの運営を行っている”フォレストアドベンチャー”が生徒に出したテーマは、「『人間の本能』を刺激する山丸ごと活用プランを提案せよ!」でした。
さらに、空間の清掃事業を手掛ける”オカムラ”が出したテーマは、「多様な人の『人間の本気』を引き出す空間革命を提案せよ!」でした。
フォレストアドベンチャーやオカムラが提示したテーマのように、各企業のビジネスの特色に関連するテーマを設定することで、企業についての理解が深まるきっかけにもなったり、実際に「働く」というイメージがつかみやすくなったりします。
さらに、「生きる歓び」「人間の本能」「人間の本気」など、あえて曖昧なテーマを設定することで、様々な解釈が可能になり、生徒の自由な発想を生み出すことができます。
②学校に関するテーマ
次に、生徒自身に関係のあるテーマは、生徒が興味を示しやすいかもしれません。その中でも、生徒にとって非常に身近な、学校に関するテーマを設定するのはいかがでしょうか。
例えば、「本当にやりたい卒業式」「生徒が考える校則」「学校をギネスブックにのせる方法」など、学校に関連するテーマが考えられます。
生徒自身に関連のあるテーマを設定すると、ディスカッションにおいても意見が出やすく、さらに、テーマを「自分ごと」として捉え、自身の中にある考えに思いを巡らせやすい効果があります。
また、身近なテーマであることで、考え始めるハードルが下がり、「とりあえずやってみる」状態に持っていきやすく、「気づいたらできていた」「もっと考えてみたい」というように、少しずつ学びをステップアップしていくことができます。
③SDGsに関するテーマ
「貧困をなくそう」「地球温暖化に具体的な対策を」「ジェンダー平等を実現しよう」など、17個あるSDGsのゴールのうち、どれか一つをテーマとして設定する方法もあります。
SDGsのゴールは、人権、経済、地球環境など、様々な分野にわたって、日本だけでなく世界中に関連するテーマが含まれるため、社会の問題解決についての探究学習を実施したい時に有効なテーマ設定となります。
ただ注意点としては、生徒自身が課題を身近に感じていない場合、アイデアが出にくかったり、自分自身の意見ではなく、「社会でよく主張されている一般的な考え」を話すだけの時間になったりすることがあります。
先ほど、生徒自身にとって身近な「学校」をテーマにしたように、SDGsをテーマにする際にも、できるだけ生徒にとって「自分ごと」に感じられ、身近なものになるよう工夫することが重要です。
④自分自身に関するテーマ
また、生徒自身に注目したテーマ設定も考えられます。
人生100年時代と言われる中、自分がどのような人生を歩んでいきたいかといった、自分自身に目を向けた探求学習は、進路選択を考える時期にも役立ちます。
例えば、これまでの人生を、小学校入学前・小学校低学年・小学校高学年・中学校・高校などの時期で区切り、特に記憶に残っているシーンや、感動した・嬉しかった・悲しかったシーンなどを思い出して、どんどん書き出してみるといった方法があります。
さらに、自分の思い出の品を自宅から持ってきたり、家族や教師にインタビューすることも有効的です。
こうする中で、自分でさえ気づいていない自身の可能性に目を向け、自分についての理解が深まり、将来のキャリアについて考えるきっかけに繋がります。
⑤他者について知るテーマ
さらに、自分自身に注目するだけではなく、他者の人生について知る中で、自分のロールモデルとなるような人物を探すテーマ設定をすることができます。
例えば、過去の偉人についてなどのドキュメンタリーに触れる中で、どのような思いに基づき行動してきたかを知り、感じたことを生徒同士で共有することで、様々な価値観に触れ、多様性への理解を深める効果があります。
⑥起業を体験するテーマ
事業創造や新商品開発など、クリエイティブな発想で挑戦する力を育てたいといった目的がある際は、商品開発などを通して、起業家体験をテーマにするという方法があります。
例えば、考えたアイディアに関して、実際に試作品を作ったり、財務計画を立ててみたり、ターゲットにアンケートを行ってみたりする中で、起業の疑似体験が可能です。
また、実際に起業をした方を学校に招き、話を聞く中で、新しいことに挑戦するときに大切にしているマインドや、ゼロからものを生み出す実際の道のり、必要な情報の収集方法など、より具体的に学ぶことができます。
⑦お金に関するテーマ
生徒にとって身近な、「お金」をテーマにすることで、金融経済教育にも繋がる探求学習を行うことができます。
「無駄遣いをしない」「お金を大切に使う」などは、学校でよく生徒に伝えられますが、実際に何が”無駄”で、何が”有益”なのかを理解している生徒は少ないのではないでしょうか。さらに、何をするのにも関わってくるお金を、どう扱えば、自分が実現したいことを叶えることができるのかを考えるきっかけにもなります。
例えば、「お金では買えないもの」や「お金を大切にするとは」「○○はいくらなら買えるか」など、お金にまつわる様々なことを議論していくことができます。
テーマだけだと進めるのが難しい…問いへの注目
ここまで7つのテーマの例を見てきましたが、いかがだったでしょうか。
ただ、このようなテーマを設定したとしても、生徒が活発に議論したり、深く探求したりすることまで繋げるのに、難しさを感じる先生方も多いと思います。
実際、テーマを設定するだけではなく、そのテーマで生徒に学びが生まれるような「問い」がしっかりと含まれているかがとても重要になります。そのためにまず、探求学習における「テーマ」と「問い」についてしっかりと理解しましょう。
そもそも「テーマ」・「問い」とは?
まず初めに、テーマは、「探求を進めていく上での方向性を指し示すもの」です。
テーマを決めることは探求を進める上で必要ですが、テーマを決めただけではうまく探求を進めることはできません。テーマをそのまま提示するというだけでは、生徒が考えを出すのに苦戦してしまいます。
そこで重要なのが、「問い」です。
問いとは、「テーマにひも付きながら具体的な探求を進めていくための手がかり」です。この手がかりがあることによって、自分のこと、社会のこと、世界のことについて探求を進めていくことが可能になります。つまり、「問い」を作ることによって、探求を駆動させることができるのです。
さらに、この問いを設定する際には、実際に生徒が考えてみたいと思えるような内容にすることが大切です。
そのような問いをつくるための3つのポイントが、以下になります。
1:気軽に考えてみようと思えるくらい簡単か?(入口の簡単さ)
2:どんな答えも答えになりうる懐の広さがあるか?(解釈の多様性)
3:追求しようと思えばどこまでも追求できる深さがあるか?(深掘りの可能性)
問いの設定について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください!
先ほどのテーマにおける問いの具体例
最後に、先ほど挙げた7つのテーマに関して、具体的にどんな問いが考えられるかを挙げたいと思います。
例えば、一つ目の「企業から出されるテーマ」で紹介した、フォレストアドベンチャーからのテーマである「『人間の本能』を刺激する山丸ごと活用プランを提案せよ!」の事例では、以下のように社員さんから問いの提示がありました。
・山を丸ごと使っていいよ! と言われたらどんなことをしたいですか? 日本は国土の6割以上が山地とされるほど山がたくさんあり、調べてみると実は多くの可能性を秘めています。そんな山を丸ごと使って「人間の本能」を刺激するとは? ・考えるより先に、心や身体が動いた体験がありますか? 誰にとめられてもやめられないことは? その具体的なエピソードや、その時の感情も手掛かりになるはずです。私たちの本能が刺激される、とんでもなく壮大で自由なプランをお待ちしています! |
「『人間の本能』を刺激する山丸ごと活用プランの提案」がテーマとしてありつつ、「山を丸ごと使っていいよ! と言われたらどんなことをしたいですか? 」「考えるより先に、心や身体が動いた体験がありますか?」など、このテーマを考えるための「問い」が多く提示されていることが分かります。
また、先ほど三つ目の例として挙げた「SDGsに関するテーマ」では、「身近にいる困っている人を挙げてみよう」という問いを提示する中で、その困っている人の悩みを生み出している背景に、SDGsが目標とするゴールに関連しているものがあるかどうかを考えることができます。
さらに、五つ目の「他者について知るテーマ」では、著名人のドキュメンタリーを観る中で、「それぞれの場面で決断を、『共感する』『共感しない』に分けるとどんな発見があるか?」という問いを提示することができます。
以上ご紹介した問いには、先ほど問いを作るコツで挙げた、「入口の簡単さ・解釈の多様性・深掘りの可能性」の特徴も見受けられます。
さいごに
この記事では、探究学習に使える以下の7つのテーマを紹介しました。
【紹介したテーマ一覧】 ①「企業から出されるテーマ」 ②学校に関するテーマ ③SDGsに関するテーマ ④自分自身に関するテーマ ⑤他者について知るテーマ ⑥起業を体験するテーマ ⑦お金に関するテーマ |
また、テーマを設定するだけでは十分ではなく、そのテーマを考えるうえで手がかりとなるような「問い」を設定する重要性もご紹介しました。
全国37都道府県 320校の学校(※2023年3月時点)で探究学習を運営している教育と探求社では、提供する全てのプログラムに、テーマだけでなく、生徒が考えたくなる問いを含んでいます。
さらに、プログラムを導入する各学校には、学校コーディネーターが付き、実際に学校に訪問し、授業の困りごとなどの相談を受けたり、第三者目線で感じたことをお伝えしたり、生徒たちの考えた企画にフィードバックをしたりすることが可能です。
今回ご紹介したテーマを取り扱うプログラムも豊富に取り扱っていますので(*1)、詳しくはこちらをご覧ください!
*1 本記事で紹介したテーマと、教育と探求社が展開するプログラム例
①「企業から出されるテーマ」→コーポレートアクセス(企業探究コース)
②学校に関するテーマ →ソーシャルチェンジ(社会課題探究コース)
③SDGsに関するテーマ →ソーシャルチェンジ(社会課題探究コース)
④自分自身に関するテーマ →マイストーリー(進路探究コース)
⑤他者について知るテーマ →ロールモデル(進路探究コース)
⑥起業を体験するテーマ →スモールスタート(起業家コース)
⑦お金に関するテーマ →VALUE(金融経済教育プログラム)
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