「まじめにやったら案外楽しかった」明星中学生徒たちの探求(前編)
2018年度探究学習プログラム「クエストエデュケーション(以下クエスト)」に取組み、全国大会に進出、グランプリを獲得した大阪明星学園 明星中学校。
今回は、昨年度クエストに取組み、全国大会に向けて切磋琢磨した生徒さんたちに、一年間どのようなことがあったのか、どのように過ごしてきたのかお話をうかがいました。
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まじめにやってみたら案外楽しかった
2018年度クエストエデュケーション「スモールスタート」に取組んだ明星中学校の生徒さん。昨年度は野澤くん、赤羽くんのチームが、全国大会で見事グランプリを受賞しました。
現在中学3年生となったみなさんは、今年は授業の枠を超え、放課後自ら希望し新たなプログラム「コーポレートアクセス」に取り組んでいるそうです。
ー昨年クエストに取り組んで、どんなことがありましたか。
赤羽くん:僕は最初はあんまりやる気がなかったんです。でも、一学期の最後に学校でとんでもなく怒られることがありました。
そのときに今村先生と「クエストで見返してみいへんか」ということになって。同じ班の野澤もすごいやる気があったので、ちょっとやってみようと決めました。
今村先生に言われてちょっとまじめにやってみたら、案外楽しかった。それでまじめにやるようになって、全国大会で優勝しました。
ーすごいですね!校長先生とはクエストのことでどんなお話をされたのですか?
赤羽くん:いやなんやったら、やめろやめろと言われました。それで、僕は正直やめたくなかったんです。このクエストが好きになった…いや、中2のそのときは好きじゃなかったけれど、このまま投げ出したら後悔するような感じがして。
やっぱりやっといてよかったなというのが、ソーシャルチェンジにとりくんでいるなかでわかりました。
全国大会にいけるんじゃないか
野澤くん:最初は僕もめんどくさいなと思っていました。でもそのときバスケットボール部に入っていて、部活がとにかく嫌いだったんですよ。親もやめさせてくれなくて。
バスケ部行かないといけない時間に、さぼる代わりにソーシャルチェンジの作業をずっとやっていたんです。そうしたら作業がだいぶ早く進んで、内容も決まってきて。中間発表のときに学年祭で発表できる権利も得られて、そこから「これは全国大会いけるんじゃないか」と火がつきました。
部活は、最終的にはやめました。バスケ部さぼりたいとかそういうのは関係なしで、ただクエストカップに全力でとりくみたかったから。全国大会のちょっと前に部活しばらく休部にしてくださいって顧問の先生に頼みにいったら、「俺たちは勝つためにやってるんだ」と言われて、「それやったら僕らもなんです」みたいな感じになって、「今これを頑張りたいと言えることが見つけれたのだから全力でがんばろう」と言われて辞めると決めました。
ー熱いですね。本気とか恥ずかしいと思う人もいるかなと思っていたのですが、そんなことはないのでしょうか。
野澤くん:実際そうだったんで。とにかくライバル同士の戦いが熱かったです。
全国大会直前に1番のライバルチームのリーダーの嶋倉くんが、とてもいいプレゼンをしたことがあって。それで僕らは絶望してしまったのですが、その後チームで頑張ってプレゼンを改造し、全国大会でいいプレゼンをできたということもありました。そのとき嶋倉くんも一緒に手伝ってくれました。
負けたときは勝手に涙が…
ーライバルチームとしてはどんな気持ちだったんですか?
嶋倉くん:自分たちのチームが負けて最初は悔しかったんですけれど、お互いにどれだけがんばっていたか知ってたんで。負けたけど、やっぱりおめでとうという感情がありました。
全国大会で優勝してくれたときは、最初から「こいつらのレベルやったら全国大会優勝くらいいけるやろ」という考えはありました。やっぱりそれでも、嬉しかったですね。
ほんまは全国大会行く気満々だったので、負けたときはほんまに泣きそうになりました。終礼のときに結果が発表されたのですが、まだ周りに人おって、ずっと我慢していました。人おらんくなったら勝手に涙でてきたっていう。それがすごく印象的に残っています。
「学校の授業はいいから、大会に出てみないか」
松本くん:昨年のソーシャルチェンジ、僕ははじめは別のチームでやってたんですよ。そのときはちょっとずつしか進んでなくて。まあいつもの授業みたいな感じで、ちょっとだけやる気だしてやってたみたいな、そんな感じでした。
途中でちょうど、全国大会に行くようなチームに絞るような発表があったのですが、その少し前くらいに不登校になりました。それから一か月くらいは学校行ってなかったんですよね。そのときに僕のいたチームは落ちちゃって。
そこからなにもせずにおったんですけれど、今村先生が声をかけてくれたんです。「西日本大会*に行く人がひとりおらんくなるから、出てみないか」と。学校の授業はいいから出てみないかと言ってくれました。
親もそろそろ限界だったようで、普段怒らないような父親に怒られて。どちらかというと行かされるような感じで学校いったんですが、そこで西日本大会に出れることを知って、それやったら僕もできるんじゃないかと。
そうしてやっていったらすごい楽しくて、どんどん熱中していった感じでした。作業中にふざけて他のやつを作ったりもしました。楽しくて。
西日本大会までソーシャルチェンジを優先してやっていました。それまでやってた部活も、もう不登校とかもあって復帰しにくくてやめちゃったんですけど。そのぶんクエストに集中できて、西日本大会で楽しくできたことというのは、自分の中ではよかったなと思っています。
(*西日本大会:大阪で開催された「ガッツ」のこと。各プログラムを受講した生徒たちが自らの意思で参加し、来場者の目の前で自分たちの企画を発表するポスターセッション形式のプレゼン大会。)
ーなんだかとても楽しそうですね。西日本大会では何についてお話されたんですか?
松本くん:コレラについての話でした。途中からでも、これぐらいならできるやろみたいな感じで、自分にできることを探して取り組みました。
もともとコレラっていうものについて、何も知らなかったんですよ、テレビでみたくらいしか。でも後々知っていくようになりました。こういうふうに自分の知らない分野もすごく知れるようになるというのは、すごい興味が湧くし楽しいことでもありました。
学校も行けて、学校が楽しくなった
湯川くん:僕も中1から不登校で、もう全然だめで。そのときに、中2のいつか忘れたけど、クエストを今村先生にやろうと言ってもらったんです。もうそろそろ学校行きたいなぁと思っていたときに、先生が声をかけてくれたので、これを機に学校に行くチャンスがあるかなと思いました。
それまで全然やっていなかったんですけれど、僕たちの班が全国大会に行ったチームに一点差で負けて、そういうの切磋琢磨しているのかっこいいなと思って。学校も行きはじめるようになりました。
クエストのおかげで学校も行けて、学校も楽しくなったので、ぜひクエストを受講しようか悩んでいる人がいたら、ぜひ迷わずチャレンジしてくださいって言いたいです!
ー最初みんなとコミュニケーションとるの、大変ではなかったですか?
湯川くん:最初はしんどかった。
嶋倉くん:(リーダーがよかった、リーダーがよかった)
湯川くん:リーダーがよかったんで。リーダーのおかげです。(笑)
チームで取り組むうちにできる友だちの関係
ーリーダーとして意識していたことはあるんですか?
嶋倉くん:去年そんなたいしたことやってへんなぁ。自分のできひん部分は全部メンバーにまかせとって、自分の得意なところしかやってないんで。
たとえば模造紙つくったじゃないですか、去年。その模造紙に関してはそこまで口出ししてないです。一応みますけど、自分のわかってないところでばんばん言っても失敗する光景しかみえないんで。だからまずは自分の得意なところからをやって、個々の得意なところを活かそうといった感じにしました。
ー人に任せるのは大人でも難しいことと思います。
嶋倉くん:最初はちょっと大丈夫かなと不安もありましたけど、自分でやるよりはこいつらのほうがちゃんとできるからって任せてやってもらってました。
やっとったらなんか、こいつこういうの得意やなとか、じゃあこういうのやらしたらうまくいくんちゃうかみたいなことを、日頃の生活からも気づくというか。気づいたら友だちなってるみたいな、そういう感覚でできるようになっていました。
松本くん:自分のなかではクエストって、もしかしたら先生の切り札だったのかもしれないです。もしかしたら不登校を解消させるための切り札だったのかも。
ちょっとでも友だちの関係さえもっておけば、ちょっとでも話し合っておけば、そこから大きな輪につながっていくんじゃないかなというのは、ちょっと思ったな。
野澤くん:そう考えたら世の中のいじめとかもなくなる気がする。どうなんやろ。
松本くん:それ卒論で使えるんじゃない?
野澤くん:いけるな!
はじめはクエストの授業にも特別なやる気はなかったというみなさん。
普段よく怒られたり、不登校だったりということもありましたが、「やってみよう」と決めて取組んでいってからは、自分たちの企画を作ることがどんどん楽しくなっていったとのことでした。
企画を作っていく中で、いいアイデアが思いついたり、考えたことを共有しあったり。周りと関わりながら一緒にひとつのものを作り上げていく楽しさや、こうしたい、こうすれば変えられるという感覚を感じられたのかもしれません。
やってみないかと声をかけてくれた先生や、力を出し合う友人同士の関係に、人の可能性を信じる力を感じさせていただきました。
後半は、クエスト2年目をどのように取り組んでいるのか、先生について思うことや将来の夢などをうかがいました。
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