生徒が自分たちの企画案を学校外へ発表!探究学習で企業や他校と繋がる様子をレポートします!
「探究学習で得る力は、生徒が社会に出た時に役立つ」と聞いていても、先生方が会社員として働いた経験がない場合、「本当に社会で通用する力を育てられているのか」「教員だけで良いフィードバックができているのか」と不安に思う方もいると思います。
そんな時は、実際に企業で働いている方と生徒が交流することで、より広い視点からフィードバックを受けることができるかもしれません。
今回は、探究学習に取り組む生徒たちが、自分たちのアイディアを企業の方々に共有し、刺激を受ける様子をレポートします!
学校外の方と交流する中で、生徒にどんな学びが生まれたのか?その様子を詳しく見ていきましょう!
中高生51校1755名、企業13社130名が全国から集まりました!
今生徒たちが取り組んでいる「コーポレートアクセス」というプログラムは、実在する企業へのインターンシップを、教室で体験する探究学習です。
まず、生徒たちは、インターンしたい企業を選び、チームを組みます。そして、商品開発や新規事業企画に関する各企業からの「ミッション」に取り組みます。
2023年度は、以下13社のインターン先企業がありました!
今回、生徒たちが企業の方と交流する場となった「クエストミーティング」は、今生徒たちが考えているアイディアを、企業の方々や他校の生徒に発表するイベントです!
イベントはオンラインで2回にわけて開催され、第1回目は中高生26校173チーム、企業13社69名、第2回目は中高生25校189チーム、企業13社61名の方々が参加しました。そして生徒たちは、企業ごとにZOOMのブレイクアウトルームに分かれて、チームで発表してくれました。
まずは、お互いに自己紹介!
今回、潜入したのは「富士製薬工業株式会社(以下、富士製薬工業)」のブレイクアウトルーム。
全国の5つの中学・高校から5チーム13名の生徒たちと、富士製薬工業の社員の方々5名が集まっていました。
始まってすぐは、生徒のみんな、緊張の面持ち…。そんな中で、まずはチームごとに自己紹介をしました。
そして、富士製薬工業の社員の方々も自己紹介。営業部や研究部、経営企画部など、さまざまな部署からお越しくださっていました!中には、北海道で働かれている方も。オンラインならではですね~。
いよいよ発表タイム!
場が温まってきたところで、チームごとに今まで探究してきたことを発表しました。各学校によって進捗状況は様々ですが、ほとんどの学校では、インターン先の企業からミッションが出され、それに添ってアイディアを考えている段階です。
そして、富士製薬工業から生徒に出されたミッションは、『あなたと私の「尊さが守られる」社会を実現する富士製薬工業の新プロジェクトを提案せよ!』。
ミッションに対する解釈は、チームによって本当に様々で、特に、ミッションの「尊さ」とは何か、様々な考え方を聞くことができました。例えば、生徒が考えた「尊さ」は、「自由であること」「自分らしくいられる」「差別がないこと」「推しが尊い、好きという感情」「思春期で他者からの批判によって失われてしまうもの」…本当に多種多様です。
また、発表されたアイディアは、富士製薬工業について詳しく調べられていることが多かったです。
例えば、富士製薬工業が女性医療に強みがある点に注目するチームがいました。具体的なアイディアとしては、「忙しい女性を楽にする授乳ベッド」「ニキビの悩みを相談できるイベント」「AIに自分の心の状況を相談できるアプリ」などが発表されました。
さらに、発表後は、社員の方が各チームにコメント、質問をしました。
その中には、自身が開発に携わっている商品に注目してくれて嬉しかったとの声や、着眼点の良さに感服し、ぜひこのまま深く探究していってほしいとの賞賛の感想が出ていました。
そして、生徒の考えに対して、「なぜ?」と深掘りする場面も。例えば、授乳ベッドの素材や価格といった、アイディアの詳しい内容や、どんな経緯でそのアイディアが生まれたかなど、詳しく質問がされました。
聞かれた質問に対して生徒は「そこまでは考えていなかったです…!」と驚きつつも、「もっと内容を詰められるように頑張ります!」と意気込んでくれていました!
さらに、生徒の方から逆質問する場面もありました。例えば、女性医療に注目しているチームからは、「なぜ富士製薬工業は、女性医療に力を入れているのですか?」と質問があり、社員の方から会社の創立背景などを直接聞ける良い機会になったようです。
続いて、社員の方から仕事の秘訣を聞きました
生徒たちが発表した後は、社員の方から、普段仕事をする上でどんなことを意識しているかを聞きました。
発表してくださったのは、富士製薬工業で働く、2人の社員さん。
1人目の岸本さんは、経営企画の部署に所属し、普段はIRに関する活動をされています。会社全体のことを知る必要がある仕事をする中で、心掛けているのは「周りをどんどん頼る」こと。
IRは投資家さんとやり取りをする機会が多く、富士製薬工業の代表として、会社全体のことを知っている必要があります。ただ、岸本さんは人事や開発の仕事をしているわけではないので、分からないことも出てきます。そんな時、様々な部署の方に積極的に話しかけ、助けてもらっているそうです。
クエストに取り組む中でも、「チーム内でお互いに頼り合い、それぞれの得意なことを活かした役割分担をしていってほしいです!」と岸本さん。そのためには、普段から色んな人に話しかけて仲良くなり、人間関係を作っておくことがコツだそうです!勉強になりますね。
2人目に話してくださったのは、信頼性保証部という部署に所属する長田さん。普段生徒たちが使っている薬の安全性や有効性を調べる仕事をされています。
大腸検査に使う薬を安全に服用してもらうための説明書を提供したところ、調査の結果、実際にその服用方法が多くの患者さんに採用されていることを知って、自分の仕事が患者さんの役に立っていると感じ、とても感慨深かったそうです。
ただ、薬の安全性や有効性を調査するのは、とても地道な作業。
そんな中で、「華のない仕事かもしれないけど、目的をしっかり意識して、一歩一歩努力すること」を大切にされているそうです。
どんな偉大なアイディアも、その裏側には地道にコツコツ努力をした跡があります。生徒たちがアイディアを考えるときも、一歩一歩地道に取り組んでいけたらいいな~と思います。
お二人の素敵な先輩社員のお話しを聞いて、クエストミーティングは無事幕を閉じました。
今回得た刺激を、各学校での取り組みにも活かしてもらえると嬉しいです!
生徒たちの感想
イベント終了後、参加した生徒たちに、話を聞いてみました。
話を聞かせてもらったのは、富山県立富山いずみ高等学校の「つぃか」チームと「AKTF」チーム。
今日のイベントの感想を聞いてみると、「”尊さ”のそもそもの概念を考えてみたり、身近なことから発想を広げてみたり、自分たちでは考えつかなかったようなことがたくさん聞けて、新鮮で貴重な体験ができました」とのこと。今までの考えが広がるきっかけになったようです。
そして、現在考えているアイディアとしては、「つぃか」チームは、ニキビに関するイベント、「AKTF」チームは、どんな人でも来やすい居場所づくりを企画中です。
今後は、「つぃか」チームはイベント内で提供したいコースの内容を具体的に考えるとともに、岸本さんが言っていた「普段から様々な人と人間関係を築く」という工夫をしながら、同級生向けにアンケートも実施したいと話してくれました。
また、「AKTF」チームはどんな企画だったらより多くの人が来てもらえるかを考えつつ、富士製薬工業の特徴と自分たちの企画をどう関連付けるかを考えていきたいそうです。
また、富山いずみ高等学校では、同じ富山県内に富士製薬工業の工場がある立地を活かし、社員の方と積極的に交流している様子。
例えば、工場見学に行った際には、薬の容器が洗浄されている様子を見たり、これまで疑問に思っていたことを直接聞くことができたりしたそう。
また、社員の方が何度か学校に訪れたこともあるようで、自分たちの発表についてフィードバックを貰う中で、打ち解けた雰囲気で話せるようになってきています。普段の学校生活では、企業の方と直接話す機会は少ないと思うので、社会に触れる良い経験が出来ていそうですね!
富山いずみ高等学校のみんな、お話を聞かせてくれてありがとう!
探究学習に取り組んだ学生が全国から集まり、企業の方に自分たちのアイディアをぶつけるクエストカップ開幕まで、残り3か月をきりました。
ミッションについてもんもんと考えたり、自分たちのアイディアは果たして可能か情報を集めてみたり…コツコツと探究に取り組む、全国の生徒の姿が頭に浮かんでいます。
「明確な答えのない問い」について、深く、深く探究してみるこの時間は、きっと一生ものの経験。みんなのかけがえのない発表を見ることを心から楽しみにしています!
そして、今回のクエストミーティングが、そんな発表を創り出す一つのヒントとなっていますように。
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