探究を経験した大学生の現在!「企業の大人が向き合ってくれた」という体験が今につながった

OBOGインタビュー

探究学習に取り組んだ生徒は、その後どのような経験をして成長していくのでしょうか?

生徒の成長をたどると、探究学習を行う意味がより明確に見えてくるかもしれません。

今回は、現在NPO法人のインターンとして活躍している大学4年生の池田遥さんにお話を伺い、中学3年生の時に取り組んだ探究学習の様子や、現在の具体的な活動について教えていただきました!

NPOインターンで活躍中!大学4年生の池田遥さん

上智大学国際教養学部国際教養学科4年生の池田遥さんは、中学3年生の時に探究学習に取り組み、その成果を発表する「クエストカップ2018 全国大会」に出場しました。現在は、大学で学びながら、認定NPO法人deleteCにてインターン1・2期生のチームリーダーを務めています。

-現在どのような活動をされているのでしょうか。

「みんなの力で、がんを治せる病気にすること」をミッションに掲げ、日常の中でがん治療研究をみんなで応援できる仕組みを社会に提案しているdeleteCというNPO法人でインターンとして活動しています。deleteCの具体的な活動は、カジュアルソーシャルアクション(CSA)という自分にできることからはじめる軽やかなアクションを通じて、がん治療研究を寄付と啓発で応援しています。

私はインターンの第一期生として2022年6月、大学2年生の時にdeleteCに参加し、現在2年目を迎えました。インターンチームでは、9月に開催される「デリシー文化祭」のイベントやSNS投稿、高校生向け探究学習プログラムなどの企画を考案し、それらを実際に形にして届けることを目標に、仲間とともに活動を進めています。

仲間とのチャレンジで特に印象に残っているのは、イベント内のカフェブースの企画と実装をした経験です。がんとの接点が比較的少ない若年層に活動を知ってもらうため、deleteCを応援してくれている高校生と、メニューや装飾の考案、当日のカフェ運営をしました。訪れた人がどのような気持ちになり、どんな顔でイベントを後にしてほしいか、想像を膨らませながら、実際に企画を形にすることは、大きなチャレンジでした。ですが、仲間と全力で準備を進め迎えた当日は、小さなお子さんや中高生をはじめ、deleteCを応援するたくさんの方がイベントに訪れ、皆さんの楽しむ笑顔を見ることができました。

-中学・高校の活動と共通しているところはありますか。

このようにチームで企画を考え、実現していくことは、中学で取り組んだ探究学習と似ていますね。

まずチームでブレインストーミングをしながら企画を立て、相手への伝わり方を考えながらプレゼンテーションを作る。中学生の時と違い、今はさらに実際に誰かに届ける。私は中学3年生の時に探究学習に取り組みましたが、現在のインターン活動も同じ延長線上にあると感じています。

deleteC提供

「テレビ好き」からメディアへの興味を発見

-中学校の探究学習では、どのようなことをされていたのでしょうか。

私が取り組んだのはクエストエデュケーションの「コーポレートアクセス」という探究学習プログラムでした。そこでは自分の好きな企業を選び、企業から探求するテーマが「ミッション」として与えられ、チームで取り組みます。

中学3年生の当時、私が選んだのはテレビ東京。テレビ東京からは「人間の勇気を掘り起こすテレビとネットの枠を超えたありえへん∞(無限)メディアを提案せよ!」というミッションをもらい、3人のチームで企画を必死に考え、企業の方たちとも話しました。最終的に「大人が子どもに教育する」のではなく「子どもが大人に教育をする」、本来とは逆バージョンの教育番組を提案しました。

大変だったのは、チームで進めていく中で意見が衝突したことです。探究学習は単に検索して正解が出るものではないので、全員それぞれの意見があるけど何が正解かは分からない。でも前進するためにひとつずつ決断し、みんなで企画を完成させるために取捨選択を重ねていきました。

チームメンバーに「このミッションをやりとげたい!」というやりたい気持ちがなければ、きっとこんな風に前のめりになって、全員で取り組めなかったと思います。仲良しの友人同士でただ集まるのではなく、「テレビ東京でやりたい!」と興味関心が合う人たちで集まって一緒にアイデアを考えたというのが新鮮な経験でした。

-「自分のやりたいことをなかなか見つけられない」と感じている中高生も多いと思います。池田さんは自分の興味をどのように見つけましたか?

今振り返ると、探究学習で一番最初に自分の企業を選ぶ、というすごく単純な選択が、自分の社会の中での興味を築くきっかけになったなと思います。

私は大のテレビっ子だったので、探究学習ではテレビ局のテーマに自然と惹かれました。日常の派生として興味のあるテーマや企業を選択することで、自分の興味関心を周りに主張することができたと感じます。それまでは企業の方々との接点もなかったですし、自分が知っている企業の大人の人たちが本気で私たちに向けて語りかけてくれることに驚きました。誰かが向き合ってくれる場面がなかったら、興味関心を選ぶこともないですし、それを友達と共有して行動してみようとはならなかったと思います。

探究学習は大人たちが向き合ってくれるからこそ、「私もこの一員になってみたい!」と社会で働いている人たちにちょっと仲間入りできるような感覚に陥ってすごく楽しかったです。

-企業の大人たちが本気で向き合ってくれた経験は今にどう繋がっていると感じますか?

私は中高生の時に自分が社会に属してるという感覚がなかったので、「自分の将来を考えなさい」「将来何やりたいか考えて大学を選びなさい」と言われても、社会の一員である自覚もなければ自分に社会で何ができるのかも想像がつかずとても迷っていました。

学校と家の往復で、会う大人は自分の家族か先生だけ。自分が何に関心があるのかを見つけるのがすごく難しいと思っていた時期に、探究学習で全く知らない企業の大人たちが私たちに話しかけてくれたのはとても影響がありました。「一緒に社会のために考えてよ」と大人の社会に誘ってくれるように接してくれたのが初めてだったので、私はそれがすごく嬉しかったです。

テレビという自分の身近なものへの関心から始まって、中学3年生の探究学習が終わった後も自分の関心がどこにあるのかを考え続けました。意識をどんどん広げていった先に、最終的に自分の興味はメディアにあるのだと定めることができました。

「大人に話しかけてもいいんだ」外の世界に触れる経験

-探究学習全体を通して得た発見はありますか?

探究学習の一連の体験を経て、「大人に話しかけていいんだ」「自分から飛び込んでみてもいいんだ」と気づけました。自分の行動に対して相手がしっかり向き合ってくれた先に、新しい機会に恵まれ自分の興味を再発見する、というまさに数珠つなぎのようなサイクルを今でもずっと回しているように感じます。その最初の火種をつけてくれたのは、大人側から向き合ってくれたはじめての経験である、探究学習での学びです。私に「飛び出せっ」とゴーサインをくれたような気がします。

「同じものをみんなで考えて、みんなで同じように学ぶ」というのが基本的な中高での学びの流れでしたが、探究学習では「それぞれがやりたいことをやっている」という空間が教室に出来上がっていて、それはいつもの授業とは全く違ったのかなと思います。

私たちが主役となって授業が進んでいき、その中に時々企業との関わりがあり、先生たちもアドバイスしてくれたりと、私たち自身が授業の中で勝手に進んでいける道が用意されていたと感じます。

-子どもにとって、大人との壁を感じる原因は何だと思いますか?

そうですね。すごくシンプルかもしれないけど、それはやっぱり住んでるコミュニティが違うから起こる自然なことだと思います。他の大人の人たちと関わる機会がなければないほど、その人たちへの知らないことによる怖さや、知らないから自分たちとは違うみたいな感覚を自ずと持ってしまう。

学校に通うことで、一つのコミュニティに属してるというのはすごくいいことだと思うのですが、だからこその閉鎖感みたいなところが原因としてあるのかなと思います。

先生以外の社会人の方々がいつもの教室にいてくれるということは、すごく異質な感じがしますよね。その異質さの中で、生徒自身が外の世界に繋がっているという感覚を持つことが探究学習にあるべきだと思います。

探究学習の時間がみんなの中で楽しいって思えるかどうかって、自分の自由なアイデアを組み込んでいいかどうかだと思います。クエストエデュケーションはその一連の流れを要求してくれてたからこそ、すごく楽しかったんだろうなあと思います。

皆さんへのメッセージ

-最後に探究学習に取り組む生徒のみなさんに向けて、メッセージをお願いします!

生徒の皆さんは、ぜひ思いっきり自分に正直に楽しんでください!探究学習は色々なやり方があるので、「もっと自由に発想していいんだよ」とか、「自分らしさをを探してみよう」と言われる場面があるかもしれません。自分らしさって何だろうとか、社会で私って何ができるだろうという問いと向き合うのはすごく難しいですよね。でもそれは今は一旦脇に置いておいてもいいのかなと私は思います。

その時に探究学習を行う上で大事にしてほしいことは、できるかできないかという自分の力量にとらわれないことです。「テレビが好きだから」とか「この人が推しだから」とか、日常の中での「好き」から派生した選択を楽しんで続けていったら、最終的にきっと「自分らしさ」が見つかるはずです。

自分が選んでいく過程というのは、誰にも真似できないあなただけのものです。恐れずにぜひどんどん選択を重ねてみてもらえたらいいなと思います!

deleteC提供

下山田新菜

明治大学国際日本学部4年。クエストカップ2024に学生スタッフとして参加し、ファシリテーターを務める。現在は教育と探求社のライターインターンとして活動中。

プロフィール
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