「コロナ禍でも職業体験に変わる経験を」インターン実践報告 枚方市立楠葉西中学校 溝尻直希先生

先生インタビュー

「これからの人生をどのように生きていくのか。社会に出たらどのようなことがあり、何を考えていくのだろうか。」

生徒が自分たちの将来について考えるきっかけとなる「キャリア教育」ですが、コロナ禍の影響によって職業体験が制限されるなど、生徒たちが学校活動においてこれまでと同じような経験をできない状況が続いています。2020年春、大阪府枚方市においても、教育委員会より職業体験の中止が要請されていました。

そんな中、「なんとか生徒たちに職業体験に変わる経験をさせたい」「今だからこそ体験できることはなんだろうか」と、枚方市立楠葉西中学校では中学2年生の職業体験の代替として探究学習プログラム「クエストエデュケーション」進路探究コース「インターン」を実施。生徒たちは働くことについて学び、自分が社会にどう関わっていきたいかを主体的に考えていきました。

今回は、枚方市立楠葉西中学校 キャリア学習担当者 溝尻直希先生より、「インターン」の検討のポイントや実践報告をいただきました。

「コロナ禍でも生徒たちに職業体験に変わる経験を」

2020年、コロナ禍のための緊急事態宣言が出ている状況下で、枚方市立楠葉西中学校に赴任した溝尻先生。

「前に勤務していた学校ではキャリア教育のビジョンが確立されていたこともあり、着任した最初のころはキャリア教育に対する意識の違いに、職業体験や職業講話が手段ではなく目的となってるように感じました。

そこでまず、キャリア教育に関するビジョン、たとえば『職業体験や職業講話といった体験を通して、どういう力をつけたいか』『その力を育成するためにこういう取り組みをやっているのだ』といったことを学年の先生方と共有し、これからのキャリア教育の取り組みのイメージをつくっていきました。

しかしそんな中、枚方市教育委員会から職業体験中止の要請があり、職業体験を実施することができなくなってしまったのです。職業講話の実施だけにとどめる学校も多い中ではありましたが、キャリア教育のステップを考えたときに中学校2年生のでの職業体験は大きな意味を持ちます。

『なんとか職業体験に代わるもの、コロナ禍の中でしかできない職業体験はないだろうか』と考え、探究学習プログラム『クエストエデュケーション』進路探究コース『インターン』にたどりつきました。」

「インターン」実施のための企画書

溝尻先生が「インターン」実施のために、学内で作成した企画書はこちらです。

『企画書を教育と探求社に送付したのは夏を過ぎてからで、当初、新たに教材を購入する予定もなかったため、年度の予算はありませんでした。しかし、中止となった校外学習の予算から、SDGs学習として何とか費用を捻出することができました。』

1.「インターン」の導入目的

「企画書にあげたインターンの導入目的は2点です。ひとつは『これまでの職業体験に代わる取り組みとして、職業観や勤労観を培う』こと。もうひとつは、生徒たちが企業の取り組みを知ることを通して、『SDGsをより自分ごととして考え実行していく力を養う』ことです。」

2.「インターン」の取り組み計画

「『インターン』の取り組み計画は、全10回(各50分)のプログラムの、2回目と3回目の間に冬休みをはさみ、子どもたちの『学びたい』『探究したい』という思いをゆさぶれるよう工夫しました」

3.「インターン」への要望

「『インターン』を実施するにあたっては、教育と探求社に相談したいことがいくつかありました。たとえば、学習や遊び感覚ではなく、生涯にわたって自分の生き方やキャリアとつながるようにどのようにすればよいか、子どもたちのSDGsの学びを翌年実施される修学旅行にもつなげられないかといったことです。

これらに対して、教育と探求社の学校コーディネーターの松本さんと相談しながら案をかためていき、そうして取り組みが始まりました。」

先生が取り組むときのポイント

実際にはじめるときには、申し込み後に「インターン」の生徒用ワークブック、先生用の指導ガイドが届きます。

「ステップ1からステップ10までの流れがワークブックですべて見えるので、子どもたちが探究を自分たちで進めることができます。一方で休校になって各自で実施しようというときには進めやすいが、先が見えてるので『結局こうなるんだ』とわかってしまい、ワクワク感が足りないのではないか、という心配もありました。そこでどのようにしたらワクワク感を演出できるか、生徒たちが探究を楽しめるか、工夫して取り組みました。

まずひとつめは、『先生も一緒に楽しむ』ということ。先生も一緒に悩んで、探究してやってみたらどうかということを、最初に学年の先生と共有しました。

ふたつめは、学年で取り組みの目的を共有し、方向を揃えていくこと。先生方は指導ガイドをみながら各自で授業を進めることができるものの、ビジョンや方向性をそろえるため、共有のスライドを作成し毎回の取り組みの前に共有しました。

3つめは、『教える、指導する』をしないこと。実は先生にとってはこれが難しく、『企業ではこうなんだよ』『社会に出たらこうなんだよ』と答えを教えるように接してしまうこともよくあります。生徒たちに『これはどこまでやればいいの』『どう終わらせたらいいの』と聞かれると、先生もどうしても不安になってしまうけれど、終わらせるとかここまでとかは、探究にはないと思います。ともに楽しんで探究をすることを大切にしてもらえればと思います。

他にも、『インターン』での体験をよりリアルなものにするために、エントリーシートを書くワークの際に本物の履歴書を使用したり、生徒の担当企業を決める際に、先生でグループ面接を行ったりしました。また、チーム編成についてもクラスを超えて、面接や履歴書をもとに行い、それにより生徒たちの間にも新しい人間関係ができました。」

生徒の取り組みと変容

「インターン」では、自ら調べて学び、発表し、振り返るという探求のサイクルは、「STEP3~5のアンケート調査」、および「STEP6~8 インターン課題への取り組み」と2回あります。

「グループで企業について調べる際には、生徒自ら企業に連絡をとってインタビューを行ったり、オンライン工場見学に申し込んだり、生徒たちが初めての挑戦にどきどきしながらも主体的に行動していました。

SDGsとの関わりについては、はじめからSDGsの課題解決を行おうとすると、SDGsが生徒たちとは遠いものに感じてしまうこともあるので、企業について知る過程で、その企業がどのような課題を解決しているのかをまず考え、そこから『その取り組みはSDGsでいうと、いったいどの課題解決にあたるのか』という流れでSDGsについて考えました。これにより、SDGsをより自分たちに近いものとして捉えられたのではないかと思います。

最後には、教育と探求社が全国の中学校と社会人や大学教員の方などを交えて行ったオンライン発表会に参加しました。当日は通常の下校時刻後の開催にもかかわらず、160名中40~50名が自ら参加を希望し、生徒たちがこれまでの取り組みを発表しました。

生徒たちのここでの成長はすごく大きかったし、目の輝きは本当に素晴らしいものを見たと思ってます」

そうした探求の過程を経て、生徒たちには様々な変容がみられたそうです。

「調査方法やプレゼンのスキルが高まり、他の教科の学習よりも汎用的な資質能力、メタ認知能力が高くなったと思われました。

また、生徒たちは普段接することのなかった、自分とは遠い存在だった他の生徒や、大人との関わり方を知った様子でした。この取り組みの中で、生徒たちにとっては、学校内でおさめるだけではできない、現実社会のキャリア形成ができたのではないかと思っています。」

終わりに

「やはり学校内より学校外で、自ら体験・経験をするというのは生徒たちにとってとても大きな学びになると思います。少人数のグループでフィールドワークを行ったり、コロナ禍でもうまく距離をとりながらできることもあります。

そして、生徒たちに『やらせる』というのではなく、『ともにやる』という姿勢が大事です。ここを脱却できないと、探究は難しいのかなと感じます。

最後にこれはどうしても伝えたいのですが、職業体験や『インターン』をすること自体が目的にならないようにしてください。これらは目的ではなく手段です。

『この取り組みではこういう力を育てたい』『自分の学校ではこういう生徒に育てたい』という目的、生徒たちの変容を目的とするなら、このプログラムはそのためのひとつの手段として、すごくいいものとして使えます。

取り組むと先生こそ、きっと面白い体験ができるのではないかなと思いますので、各学校の目的を大事にしつつ、考えてもらえたらなと思います。」

難しい環境の中でも、生徒の学びに真摯に向き合い、ともにチャレンジをしていく。溝尻先生のお話から、先生自身の探求心を感じました。

2022年度も引き続き校外学習が制限されてしまうことが見込まれます。「インターン」は、そのような状況下においても、生徒が教室の中で職業観を養うことができるプログラムです。「インターン」を通じて、新たな社会の一面に出会い自身のキャリアや働くことについて考える生徒が増えてほしいと思います。

▼教室内で職業体験ができる「インターン」

▼定期的に探究学習のやり方や実践事例を学べるセミナーを開催しています
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