生徒の「問いを持つ」姿勢を生み出す!京都市立京都工学院高校の探究事例
日々の授業や学校生活の中で、「生徒の主体性を育むにはどうしたらいいのだろう?」「もっと前向きに学ぶ姿勢は、どうすれば身につくのだろう?」と悩んだことはありませんか?
京都市立京都工学院高校の有本 淳一先生も、「授業に積極的に参加する生徒が少ない」と課題意識を持っておられたとのこと。
そんな有本先生が目を付けたのは、「問い」でした。「教科・学問の本質は、問いを持つこと」だと考える有本先生は、生徒が日常的に問いを持ち、主体的に学ぶための取り組みをされてきました。
今回は、有本先生のこれまでの活動をご紹介します。
「生徒の主体的な姿勢を育てたい」
京都市立京都工学院高校は、2016年に開校した高校です。
理工系大学への進学を目指す「フロンティア理数科」と工業科として現場での中核的な人材を目指す「プロジェクト工学科」で構成されています。
担当教科は理科で、1年生の学年主任をつとめる有本先生は「授業に積極的に参加する生徒が少ない」と課題意識を持っていました。
有本先生「生徒たちは、進学したいという気持ちはあるけれど、なかなか行動に移せないようでした。 言われたこと以外やらない、宿題の提出率が低いなど、主体的に取り組める生徒は少なかったように思います。
そんな時、『問いを持って世界を眺める』というコンセプトの探究学習教材『Question X』を知り、これは今までになかった教材だ!と感じたのです。
私は、問いを持つことこそが学問の本質であると思います。日常で『なぜ?』と思ったことを、各教科のもつ世界の見方を知ることで深めていける。ただ知識をつめこむだけではない、本質的な教科学習ができると感じました」
QuestionXとは?
QuestionXは、日常に眠っている些細な疑問に目を向け、「問い」の面白さに気づくことを目標に開発されたプログラムです。全6コマで構成され、最初はカードゲームから始め、最後は自らの問いを探求するというような流れになっています。
「カードゲーム」で前のめりになる生徒たち
「問いを持って世界を眺めること」をテーマとした探究学習教材「Question X」は、まず生徒たちになじみのあるカードゲームの形をとって始まります。
有本先生「『Question X』では、問いとの出会いが設計されたカードゲームをきっかけに、生徒たちが問いを持って日常を過ごす体験をし、最後には自らの問いを探究していきます。答えや成果を出すことだけを重視せずに、問いが問いを呼び、分からないことが増えていく面白さを感じることを目指すという変わったプログラムでした。
授業をはじめる前は、生徒たちが本当に参加してくれるだろうか、『こんなものやらない』とそっぽを向いてしまうのではないか、どうやってファシリテーションしたらよいだろう…と不安に思っていました。
しかし実際にはじめてみると、生徒たちが前のめりになってカードゲームに取り組みはじめたのです。『この子たち、こんなに熱中するのか!』と、普段の授業ではみられない生徒たちの様子に驚きました」
高校2年生の「キャリア教育」、高校1年生の「学ぶ姿勢づくり」に活用
「問いを持つこと」をテーマとし、答えがない事柄を考える、まさに探究的なプログラムですが、京都市立京都工学院高校では「Question X」をどのように活用したのでしょうか。
有本先生「高校2年生には、『キャリア教育』の意図を持って、問いを考える授業を行いました。自分にとって関心がある問いを考えることが、進路・キャリアを考えることにつながると考え、これから受験生になる秋のタイミングで、『自分の将来を考えて、しっかり勉強していこう』という認識を持ってほしい、という思いがありました。
一方、高校1年生には、『学ぶ姿勢づくり』の意図を持って、問いを考える授業を行いました。入学してすぐの授業で、自分の問いを見つける体験をすることで、高校ではただ教えてもらうのではなく、『なんで?』『知りたい!』という興味関心を持って取り組んでくのだ、という意識作りを目指しました。」
生徒が問いを持つ、本質的な教科学習へ
生徒の問いを持つ姿勢は、どのように教科学習につながっていくのでしょうか。
有本先生「私は、問いを持つことこそが学校教育の本質であると思います。日常で『なぜ?』と思ったことを、各教科のもつ世界の見方を知ることで深めていける。その先に、ただ知識をつめこむだけではない、本質的な教科学習につながっていく。
そんな教科学習を実現したく、担任や各教科の担当とは『生徒たちから出てくる問いをきちんと受け止め、授業の中で扱っていこう!』と話していました。
たとえば、私の担当科目である理科(地学)では、『なぜ物は下に落ちるのか?』『山の上で空気がうすいのはどういうこと?』といった問いによって、科学を通すと世界はどう見えるのか、科学の持つ世界の見方を生徒たちに知ってほしいと思っています。」
”問い”を校内の日常語に
有本先生「ただ、生徒が自ら問いを持って教科学習に取り組んだり、自らの進路やキャリアについて考えたり、そうした『問い』が日常的に生まれる基盤を作るには、探究学習の授業の時間だけではとても足りないということも感じています。
もともと問いを意識する習慣がなければ、生徒も教員もだんだん忘れていき、これまでの日常に戻ってしまう。まずは問いを持つこと、問いを受けとめることを、教員が常にしっかり意識して、問いが習慣になることが大切だと感じました。
そこで、文化祭や遠足などの行事で、問いを持つことを継続的に実施するような仕組み作りをしています。また、研修旅行(修学旅行)では自らの問いを持ち、それを探究していけるようなプログラムとして企画を進めています。
そして、普段のホームルームや、生徒が廊下を歩いているようなありふれた日常でも、常に『どうしてだろう?』と教員が生徒に問いを投げかけるようにしています。”問い”という言葉を校内での日常語にしていきたいです。」
問いを持つことで教育が変わる
有本先生は、「問いを持って世界を眺める」ことこそが教科学習の本質であると考え、まずは探究学習の授業で『問い』を持つ姿勢づくりを、そして教科学習や普段の学校生活にも、生徒たちの『問い』が生まれ育つ土壌を、いま育んでおられています。
有本先生「『問いを持つ』姿勢を生み出し、生徒の主体性を引き出すことは、日本の教育を変えていける力をも内在しています。ただ、それを実現していくためには、1人や1校の実戦ではなく、全国の多くの学校での実践や繋がりが必要になります。私たち教員で、日本の教育を変えていきませんか?」
ただ教えるだけではない。生徒の『問い』を持つ姿勢を育てて、一緒に教育の未来を変えていきませんか?→問いを探究する探究学習プログラム『Question X』
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