「問い」を持つ力はなぜ必要?専修大学北上高等学校 石川一郎先生インタビュー

「問い」を持つ力はなぜ必要?専修大学北上高等学校 石川一郎先生インタビュー
先生インタビュー

10秒で読める記事の要約
現代の教育において、生徒が問いを持つ力、つまり知的好奇心が重要です。しかし、授業の進行や定期テストの影響で、先生方は生徒の問いに十分対応できず、生徒は『余計なことを言わない方がいい』と考えがちです。その結果、問いを持つ力が低下している現状に危機感を抱いています。問いを引き出すためには、先生が生徒の疑問に共感し、問いを深める姿勢が重要です。思考停止状態をひっくり返すQuestion Xなどの教材を使うことで、知的好奇心を刺激し、問いの面白さに気づかせることができると考えています。

近年、教育現場で「問いを持つこと」の重要性が注目されています。探究活動を進めるうえで、生徒たちが「問い」を持つことはなぜ必要なのでしょうか。また、どのようにして「問い」と向き合っていけばよいのでしょうか。一体なぜ「問い」を持つことがそんなにも重要なのか、疑問に思ったことのある先生方も多いのではないでしょうか?

今回は教育の現場で活躍する石川先生にお話を伺い、生徒たちが「問いを持つ力」をどのように育み、それが成績や進路にどのように関わるのか、詳しくお話を伺いました。「問いを持つ力」がなぜ生徒にとって必要なのか、教えていただきました!

探究活動は、成績のため?進路のため?それとも…

専修大学北上高等学校 石川一郎先生
21世紀型教育機構の理事として、現代の教育改革を推進するリーダー的存在。聖ドミニコ学園・星の杜中学・高校、福山暁の星中学・高校でカリキュラムマネージャーを務め、専修大学北上高等学校の理事として活躍。数多くの学校の教育改革に深く関わり、先進的なアプローチで知られている。かえつ有明中学・高等学校元校長。香里ヌヴェール学院元学院長。著書に『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)、『2020年からの教師問題』(KKベストセラーズ/ベスト新書)、『2020年からの新しい学力』(SB新書)、『先生、この問題教えられますか』(洋泉社)

「問いを持つ」とは「好奇心を持つ」こと

ー現代の教育において、生徒の「問いを持つ力」がなぜ必要とされているのか教えてください。

まず、問いを持つことがなぜ大事なのでしょうか?一見、問いを持ったからといって成績が上がるかは分かりませんし、大学受験に直接役立つとは限りません。そのため、「本当に問いを持つこと自体に意味があるのか」と疑問に思う方も多いかもしれません。

そこで「問い」という言葉を表現し直してみると、「知的好奇心」のようなものかなと私は思います。知的好奇心は本来誰しも持っているはずなのですが、悲しいことに学校教育の中でだんだんと好奇心を持つ機会が減っているように思います。

なぜなら、授業の進行上、先生が生徒がその場で出してくる、分野を問わない全ての疑問にすぐに答えることは難しいからです。「それはあとでね」と対応するうちに、生徒たちは知的好奇心を探求することが減ってしまいます。、また、特に同調圧力の強い現代においては、生徒はクラスメイトの反応を気にして「余計なことは言わないようにしよう」と考え、知的好奇心よりも「正解」を求めるようになっていくのです。

結果として、「問いを持つ力」自体が小学校6年間でどんどん低下していると感じています。好奇心や問いを持てない環境を、授業内容の増加や40人一斉授業形態といった教育現場の制度が作り出してしまっているというのが現状ではないでしょうか。

ー学校という場では、やはり受験や進路が優先されがちなのでしょうか。

そうですね。多くの先生方は定期テストのことを頭に置いて授業を進めています。定期テストでは正解が決まっている問題しか出せないため、自然と「正解がある問題」が最も重要だと先生も生徒も感じるようになります。

私立中学の受験に向けての学習も、上位校に追いつくために、このように「正解を早く正確に答える」ことが中心になってしまいがちです。

「問い」を持つ力はなぜ必要?専修大学北上高等学校 石川一郎先生インタビュー

正解からあえて脱するためには?

ー生徒の知的好奇心に火をつけるためのヒントはありますか?

その点で、「クエスチョン・エックス」というプログラムは非常に有効だと思っています。最近、ある学校でこのプログラムを使って生徒たちが問いを次々と発する様子を目にしました。

このプログラムの良い点は、知的好奇心を喚起する構造があることです。例えば、「猫に意識はあるのか」という問いが出たのですが、普段の授業では正解を求めることに慣れてしまっている生徒たちが、「クエスチョン・エックス」を通してあえて日常の違和感に着目し、新たな視点から問いを生み出せるようになります。

「クエスチョン・エックス(QX)」とは?
「クエスチョン・エックス」は、「問い」をテーマにした探究学習プログラムです。生徒たちは、カードゲームを使って、問いを作り、問いをもって世界をみる楽しさを知っていきます。2023年に開発され、当初は80校、2024年の今では2倍の185校が導入し、現在約2万5000人の生徒がQXを体験しています。
詳細はこちら

ーそういった「正解のない問い」に取り組む際、先生はどのようなことに気をつけて生徒と関わっていけばよいでしょうか。

まず、先生がすべての問いに答えを持っている必要はありません。生徒から「猫に意識はあるのか」と聞かれたとき、まずは「なぜそう思ったの?」「どこからその考えを抱いたの?」と問い返すことが重要です。

生徒がどう感じたのか、何をきっかけにその疑問を持ったのかを聞きながら、問いを深め、解像度を上げていくのです。それが生徒と共に考える「壁打ち」のような役割を果たします。

ここでポイントとなるのは、先生がいかに「ファシリテーター」としての役割を果たせるかどうかです。ファシリテートする方法や、その役割が果たす意味を先生自身が理解している必要があると考えます。

教育現場に「変化」をもたらす

ー今後、「クエスチョン・エックス」は教育現場でどのような役割を果たすとお考えですか?

教育現場は世の中の変化に追いつくのが遅いのが現状です。例えば、パソコンやインターネットの利用が教育現場で普及するまでに時間がかかったように、新しい教育方法は浸透するまでに時間がかかります。

クエスチョン・エックスのようなプログラムは、その遅れを取り戻し、教育現場の変化を促進する究極のツールになるのではないかと感じています。問いの大切さを実感し、もっと多くの先生たちがその価値に気づけば、教育はもっと良くなると思います。

ー「分からない」ことを先生方が恐れすぎているようにも感じます。これまでの教育がガラッと変わる第一歩は何が必要だと考えられますか?

生徒の成績が上がったり、大学受験に合格したり、生徒の変化が成果として見えないと、先生は安心することができません。例えばクエスチョン・エックスがそのような「変化」となれば、先生方も変わっていけるのではないかと思います。

先生方はある意味、真面目すぎるところもあると思います。そのため私たちが先生たちにもっと寄り添って、「それで大丈夫ですよ」と新しいやり方を後押ししてサポートする必要があると強く感じています。

最後に

ー最後に、探究学習を担当する先生方へメッセージをお願いします。

探究学習では、ただ教材やワークシートを埋めるだけでは、本当に生徒の学びにはつながりません。勉強は覚えるだけでなく、学んだことを問い直すことが重要です。

教育を改善するためには、先生たちが汗をかくのではなく、子どもたちが自分で考え、行動できるようにしなければなりません。そのために、総合的な探求学習が役立ち、学力向上につながると考えています。

クエスチョン・エックスのようなプログラムを通じて、「問いの面白さ」に気づき、生徒と一緒に探究する楽しさを見つけていただければと思います。

問いで、世界とつながる。先生向けオンラインセミナー開催!

全国の3校で「問い」をテーマとした探究学習プログラム『クエスチョン・エックス』を実践している先生方と石川先生をお招きし、オンラインセミナーを実施します。セミナーでは、生徒たちの知的好奇心を引き出し、学びに活かす具体的な事例を深掘りします。『クエスチョン・エックス』プログラムを導入した学校での効果や、生徒たちに起こった変容についてもご紹介します。

9月30日(月)20:00~21:00 昭和学院秀英中学校高等学校/秋葉先生
10月2日(水)20:00~21:00 宇和島市立吉田中学校/梶谷先生
10月7日(月)20:00~21:00 専修大学北上高等学校/石川先生・安藤先生

参加無料!
詳細・申込みはこちら:https://info.eduq.jp/form/QX-online

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