第1回:探究学習がうまくいかない理由とは?—「やらされ探究」からの脱却

探究学習でプロジェクトをやっても、どこか他人事…
「SDGsのイベントを企画しても、生徒が“やらされてる”感じなんです」
「それっぽいプレゼンはするけど、“これが自分のやりたいことだ!”って熱量がないんですよね」
こんなお悩みを、探究に力を入れている先生方からよく耳にします。
探究学習に取り組む中で、生徒が「やっているフリ」になってしまう。
プロジェクトは成立しているように見えて、そこに“当事者としての思い”が宿っていない——。
それは、生徒の中にある「本当にやってみたい」「なんとかしたい」という思い=“願い”に、十分にアクセスできていないからかもしれません。
解決の鍵は「願い」という起点を持つこと
「じゃあ、どうすれば“自分ごと”になるのか?」
その鍵は、生徒一人ひとりがわたしの“願い”に向き合うことだと、私たちは考えています。
ここでいう願いとは、将来の夢や進路の話に限りません。
「こうだったらいいな」
「なんかモヤモヤする」
「誰かの力になれたら嬉しい」
そんな素朴な気持ちや感覚の中に、探究のエンジンになる原石が眠っているのです。

「MY PURPOSE」が大切にする、3つのアプローチ
今回新たに開発した「MY PURPOSE」は、生徒が“自分の願い”に出会うために設計された探究学習プログラムです。表面的な願いではなく、深く願いを掘り下げるには、言葉になり切っていないことにも意識を向ける必要があります。
そのため本プログラムでは、 頭・心・身体という3つのアプローチで願いにそれぞれ迫っていきます。
順にご紹介します。
① 頭:世界を捉える“レンズ”を手に入れる(STEP1〜3)
最初のステップでは、写真や出来事をいろんな「レンズ」から眺める時間を作ります。
生徒たちは、たとえば「美しさ」「正義」「歴史」「自由」といったさまざまな視点から物事を眺め直し、「自分はこんなことに惹かれるんだな」と、自分自身の関心に気づいていきます。
こうした“見方”のゆらぎの中で、「あれ、私ってこういうことに反応するんだ」と願いの“タネ”がふっと浮かび上がることがあります。
② 心:価値観から“わたし”を掘り出す(STEP4〜6)
次に、NVC理論に基づく「価値観カード」を用いて、生徒は「わたしが今、大切にしたいこと」を探ります。
50枚のカードから5枚を直感で選び、ペアで語り合います。
すると、自分でも言葉にできていなかった願いが、他者との対話を通じて輪郭を持ち始めます。
友達から贈られたカードをきっかけに、「自由って、私にとって本当に大事なんだ」と気づく生徒の様子も見られました。
このステップでは、互いの深い部分にある想いや願いに気づき感じられる感度が養われていきます。

③ 身体:まだ言葉にならない願いに触れる(STEP7〜9)
最後に、身体の力を借りて“願い”にアプローチします。
思考を一旦止めてみて自分に意識を向ける「リセットワーク」、一人で静かに歩く「ソロウォーク」、 そして手が動くままにやってみる「コラージュづくり」。
これらの活動は、生徒の“思考”ではなく“感覚”を用いることで、無意識に感じていることや思っていることと向き合う時間。
誰かに見せるためじゃなく、自分だけのために静かに手を動かす時間が、まだ言葉になっていない願いを形にしてくれるのです。
先生の声:「遠回りのようで、最短距離の探究でした」
ある先生はこう話してくださいました:
願いというテーマが絶妙だった。夢というと職業の話になりがちだけど、 願いだと、生徒が“自分の中の小さな声”に耳を澄ませられる。
一見遠回りに見えるこのプロセスこそが、探究の最短距離なんだと感じました。
また、別の先生は言います:
このプログラムを経た生徒は、他の探究活動に取り組んだとき、「何が印象に残ったか」だけじゃなくて、「それが自分にとってどう意味があったか」まで言語化できていた。
つまり、自分の中に“考える軸”ができたんだと思います。

おわりに──「願い」で火をともす探究へ
探究を“やらされる時間”から“わたしの願いに基づく時間”へ変える鍵は、まだ輪郭を持たない「願い」の火種に向き合うことだと私たちは考えています。
頭のレンズで視野を拡げ、 心のカードで価値観を映し合い、 身体に意識を向け言葉以前の衝動を掬い上げる。
こうして芽吹いた願いは、生徒の探究に当事者性を与え、 やがて社会との接点を探すフェーズで何度も問い返され、磨かれていきます。
大きな夢になっても、そっと胸に残るさざ波でも、 火種は“自分ごと”の学びを照らす灯りになり続けるはずです。
「MY PURPOSE」の詳しい内容はこちらからご覧いただけます!
このブログでご紹介している「MY PURPOSE」は
生徒一人ひとりの“願い”に向き合うことを大切にしたプログラムです。
導入を検討したい方、もっと具体的に知りたい方は、プログラム詳細ページをご覧ください。
MY PURPOSE プログラムの詳細はこちら
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