探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。

探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。
探究学習入門

子どもたちの「生きる力」を育む教育を目指し、多くの学校が取組みはじめている「探究」という学習の形。次期学習指導要領でも「総合的な探究の時間」をはじめとして、「探究」という言葉が入った科目が複数新設されることになっています。

しかしながら、その概念はなんとなくわかっていても、そもそも探究学習とは何なのか、どうしたら子どもたちの主体性を育む探究、「主体的・対話的で深い学び」を実現することができるのか、明確にわかっていることは少ないのではないでしょうか。

今回は、教育と探求社 学校コーディネーターの佐藤 瞬より、探究学習とは何なのか、答えのない問いと向き合うことについてお伝えいたします。

▼「主体的・対話的で深い学び」を実現するための探究学習
探究学習のテーマをどう決める?問いをつくるときに意識すべき3つのこと
授業で意見が出ない?生徒がいきいき意見を交わせる「安心安全な場」の作り方
よい「振り返り」とは?探究学習で学びにつながる振り返りを行う4つのポイント

探究学習とは、答えのない問いに向き合うこと

探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。

探究学習の重要な特徴のひとつとして、「答えのない問いに向き合うこと」があげられます。

答えのない問いに向き合うとは、「誰も答えをもっていないこと」を自覚して、「自分たちで答えを創り出そうとしていくこと」です。

たとえば、「働くとはどういうことか」「生きるとはどういうことか」といった問いは、誰かが答えをもっているわけではありません。自分自身に問いかけていくことによって、自分なりの答えを創り出していくものです。

答えのない問いに、自分なりの答えをみつけていくこのプロセスは、創造的な探究学習に欠かせないものです。

自己肯定感があがり、自ら行動するように。楽しくて学校にくるようになる子どもも。

探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。

答えのない問いに向き合うことにより、生徒たちは自分自身の新しい可能性を発見することができるようになります。

自分はどう考えるのか、自分は何を答えとするのか。すでにある答えを理解したり記憶したりするのではなく、答えを自分が決めていくことで、「自分はこんなことを考えていたのか」「こんな考えが生まれるのか」と、眠っていた自らの可能性の大きさに気づくことができるのです。

その発見は、生徒たちにとって何よりも嬉しく、そして楽しい経験となります。自己肯定感があがっていくことにつながります。

授業がつらいから学校に行きたくないと言っていた生徒が、探究学習の授業がはじまると学校にくるようになるということがあります。それはこのような「自らの可能性に気づく楽しみ」が探究学習にあるからかもしれません。

自分の可能性に気づき、自己肯定感が上がっていくと、自分で考えることはますます楽しいものになっていきます。探究学習の授業の外でも、自ら考え、自ら行動するようになっていくでしょう。

探究学習で重要なのは「先生の向き合い方」

探究学習とは?答えのない問いに向き合い、生徒が自らの可能性に気づく学びを。

生徒たちが自らの可能性に気づき、自ら考え行動するようになっていく。

そんな「答えのない問いに向き合う」探究学習の授業を実践するためには、どのようなテーマに取り組むか、何について考えるかといった授業内容以上に、生徒に対する先生の向き合い方がとても重要となってきます。

生徒たちに「答えを提示する」のではなく、生徒たちが自ら考え、自ら答えを出していけるように「サポートしていく」。そんな先生の向き合い方が、生徒たちの主体的な学びを生み出します。

「お金持ちになりたい」と生徒が語ったらどうするか

しかし、それは頭で理解していても難しく、言葉でいうほど簡単なことではないかもしれません。ついつい自分が思っている答えを伝えたくなったり、◯か×かで判断したくなったりすることもあるでしょう。

例えば、探究学習の授業で、「自分自身がどうありたいか」をテーマにしてクラスで考えているとします。そんな時に、「お金持ちになりたい」と生徒が語ったら、どのように思いますか。

もしかしたら、もっと真面目に考えて欲しい、これだと教室に掲示できないなと思って、「別なことでは何かない?」と聞きたくなるかもしれません。

しかし、そうすると「お金持ちになりたい」という生徒の思いを、先生が無視することにつながってしまいます。

生徒は自ら考え、自ら答えを出したのに、「それではいけないのだ」「先生がほしい答えを探さなければ」と感じてしまうでしょう。自分の考えはだめだと自己肯定感が下がったり、人がほしい答えを推測していうことに力を尽くすようになっていってしまいます。

だからといって、思ってもいないのに「それは素晴らしい」と、先生が生徒の考えにあわせてることもあまりよくありません。生徒は嘘を感じるでしょうし、先生もストレスがたまるでしょう。では、どうすればよいのか。

この例で言えば、「お金持ちになりたい」と思うに至ったわけについて聞いていくことが考えられます。

なんでそう思ったのだろう、他のことよりもお金に価値をおいているのってなぜなのだろう。生徒の考えや答えに関心を持ち、一緒に答えを探していくパートナーとして、共に考えていく姿勢で関わっていく。

そうすることで、生徒は励まされ、答えのない問いに向き合い、自ら考えて答えを出すことを楽しめるようになるでしょう。そしてそうした生徒の成長は、先生にとっても何よりの感動や楽しみになるはずです。

まとめ:未来を前にしたら誰もが答えを知らない

今回は、探究学習において大切な「答えのない問いに向き合うこと」についてお話させていただきました。

答えがないからこそのハラハラする気持ちややきもきする気持ちもありますが、どこまでも生徒を信じて、活動の中で探究することの楽しさを感じられるように環境を整えていく。未来を前にしたときには、誰もが答えを知らない素人です。生徒が出してくる答えを期待しワクワクしながら、一緒に楽しんでいけると素敵だなと思います。

次回は、探究学習の時に最大の課題となる問いのたて方についてご紹介したいと思っています。

 

 

教育と探求社 開発部 佐藤 瞬

上智大学大学院総合人間科学研究科教育学専攻博士前期課程修了。大学院在学中に、青年海外協力隊として中米・ベリーズに小学校教員として派遣。2年間の勤務後に、公立...

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