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生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~
プログラム開発話

「他の授業では寝ている生徒が、いきいきと授業にとりくみはじめた」

「うちのクラスの子どもたちが、こんなプレゼンなんてできるわけがないと思っていたのに、やったみたら堂々と自分の意見を発表していて、驚いている」

探究学習プログラム「クエストエデュケーション」をはじめたクラスの先生からは、このような声を多くいただいています。

いったいなぜ、クエストエデュケーションをやると生徒たちがいきいきと授業にとりくみはじめ、これまで見られなかったような新たな一面を私たちに見せてくれるようになるのでしょうか。

先生が真摯に生徒に関わること、授業の内容が面白いこと、様々な理由がありますが、「他の教材ではなく、なぜクエストエデュケーションが」というひとつの答えとしては、プログラムの中に「学びのデザイン」が設計されているということがあげられます。

この連載では、開発部の福島創太から、クエストエデュケーションの「学びを起こすデザイン」についてお話しします。

<連載>社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」の学びを起こすデザイン
第1回 活動に向かうモチベーションのデザイン
第2回 繰り返しのなかで学ぶデザイン(仮)
第3回 相手、社会、そして自分にチェンジを起こすデザイン(仮)

生徒にやる気と学びを起こす「学びのデザイン」

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

教育と探求社が開発するクエストエデュケーションには「生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか」という「学びのデザイン」がプログラムごと独自に設計されています。

まずはじめに、なぜクエストエデュケーションでは「学びのデザイン」を大切にしているかお話します。

ご存じのように、探究学習やアクティブラーニングといった「活動を通した学び」により、教科教育では起こりづらい発見や気づき、直接的には育みづらい資質や能力を伸ばしていくことが可能です。

しかし、活動はあくまで手段であって、気づきや学びこそが本来の目的であるにも関わらず、探究学習などでは「どんな活動をするか」に特に意識が向いてしまい、「どんな学びが起こるのか」がおろそかになる、ということが起こりがちです。

そんな中で我々は、生徒が何を伝えるのか(プレゼンの質)、生徒が何をつくるのか(企画の質)ではなく、生徒に何が残るのか(気づき・学びの質)ということを最も重視しています。

そのために、ただ活動をして終わるのではない、授業を通して一人でも多くの生徒に、より豊かな気づきや学びが起こるように、教材にほどこしている工夫があります。

それが、「学びのデザイン」です。

全ての生徒には自分さえ気づいていない可能性が眠っていて、その可能性が発露する機会さえあれば、彼らは自ら学んでいくと信じています。そして学校は、多くの子どもたちが通う、可能性のあふれる場です。クエストエデュケーションを学校の通常授業を通して先生が実施することで、学校の成績や授業への興味関心、あるいは教室での生徒同士の関係性と関係なく、1人でも多くの生徒に、学びと気づきの機会が届くことを願っています。教材を通して学校の先生と協働するうえで、一人でも多くの生徒に豊かな学びを実現するための工夫が「学びのデザイン」なのです。

それでは、実際にどのように「学びのデザイン」が教材に設計されているのか。

今回はクエストエデュケーションの4コース、全9プログラムの中から、社会課題の解決をテーマにしたプログラム「ソーシャルチェンジ」について、どのように「学びのデザイン」を設計したかお話します。

社会課題の解決をテーマとする探究学習プログラム「ソーシャルチェンジ」

「ソーシャルチェンジ」は、社会課題の解決をテーマとする探究学習プログラムです。

アクティブラーニングという言葉が巷で流行り始めた2015年、「ICT環境が整備されていなくてもできるアクティブラーニングの教材がほしい」「企業や地域などを巻き込む授業ではなくても、探究学習ができないか」という声を受けて、どんな地域、学校でもできる「アクティブラーニングはじめの一歩」を実現するために開発をはじめました。そして開発を始めてから2年後の2017年3月にプログラムをリリースしました。


生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~
カバーアート:現代美術家 梅沢 和木氏

社会課題探究コース「ソーシャルチェンジ」

自ら課題を発見し、その解決を探求するアクティブ・ラーニング型プログラム。生徒は、自ら見つけた課題に当事者として向き合い、その解決にチームで取り組み、発表します。

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「キミが誰かを笑顔にする日」というコンセプトのこのプログラムは、生徒たちが主体的に社会課題を見つけ、その解決策を考えてプレゼンテーションを行います。

「社会課題の解決」はそれ自体が正解のない問いの探求です。「何を課題とするのか?」「どうすれば解決できるのか?」、どこにも正解がないからこそ、考える自由度が非常に高いテーマです。

また社会の課題を解決するためにはその課題の背景や周辺情報を調べる必要があり、「社会を知る」入り口にもなります。さらに、「まだ誰も解決していない課題」を解決するためには、イノベーティブなアイディアが求められ、創造性や仲間との協働が欠かせません。

そうした意味で「社会課題の解決」は、探求型の学びのテーマとして非常に有効なテーマと言えます。

「社会課題の解決」では、やる気が起きない

しかしながら、教材のテーマを社会課題とする際に、いくつかの課題がありました。そのひとつが、「生徒のやる気が起きないのではないか」ということです。

「社会課題」というテーマ自体が、生徒からするとお勉強的で小難しく、見るからに意識が高い。このことは、生徒に「学びを起こす」前段の、「活動」に向かうモチベーションがそもそも沸きづらい、あるいは沸く生徒が限られることを示唆しています。

もちろん、社会課題に取り組むことの意義やそのことで得られる能力の将来的必要性を語って「取り組ませる」ことはできるでしょう。しかし、それでは生徒の主体性は育まれないし、その場しのぎの活動になり、学びが起きる可能性は非常に低くなります。

この「取り組むモチベーション」問題に対して、我々は4つのデザインを組み込むことで、プログラムのステップを経るごとに自然と社会課題に生徒の気持ちが向いていくよう設計しました。

生徒のモチベーションを高める「4つの学びのデザイン」

1.はじめは身近で面白いテーマから

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

まず第一のデザインが、「ソーシャルチェンジ」という社会変革をタイトルに掲げながらも、社会課題に取り組む活動をはじめるのを、授業がはじまってから4回目の授業からとなるようにしたことです。

最初の3回の授業は、ウォーミングアップのためのステップとし、そこでは「学校をテーマにして企画を考える」という設計にしました。

環境問題や貧困問題といった大きな社会課題を最初からテーマとすると、中高生にとって身近なテーマではなくそもそもよく知らない。調べるところからはじめなければなりませんが、「学校」がテーマだと違います。多くの中高生は学校に毎日通い、そのすべてを知る、いわば「学校のプロフェッショナル」なので、学校がテーマであれば「わざわざ調べる」ということをしなくても課題に取り組むことができます。

さらに、「学校をギネスブックにのせる方法」「体育館を使って一億円稼ぐ方法」など、学校を活用しながらも、通常では考えないような興味関心を引く「ズラした」問いを設定することにしました。

「学校」というテーマ自体にすでにモチベーションがわきづらいと感じる生徒にとっても、「面白そう」「ちょっとやってみようかな」と思えるような内容となることを意識したのです。

もちろん、学校の授業3コマ分では、一つの企画を作り上げるのに十分な時間とは言えません。

しかし「とりあえずやってみる」という体験の価値を優先するために、あえて3コマという「極端に短い時間設定」で取り組むよう設計しました。

つまり一つ目のデザインは、「この学びのために生徒がわざわざやらなきゃいけないことをなくすこと」、ちょっとズラした課題を設定して「面白そうだしやってみようかな」という気持ちをひきだし、「入口のハードルを下げること」でした。

「面白そうだからやってみた」、「やってみたらできた」という体験から、「できたからもうちょっとやってみたい」という気持ちを引き出すことを意識したのです。

2.社会課題としてではなく、社会課題に出会う

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

そして4回目の授業から、いよいよ社会課題に取り組んでいきます。ここでも1つのデザインの工夫があります。

それは「社会課題を社会課題として出会わせない」ということです。

社会課題はそれだけで「お勉強っぽさ」を帯び、ハードルが高い。のっけから生徒同士が社会課題について話し合ったら「そんなことも知らないの?」、「それ社会課題じゃないよ!」など生徒ごとの知識量や社会と触れている機会の量によって話し合いに偏りが生まれる可能性もあります。生徒によってはモチベーションが下がってしまうでしょう。

そこで、社会課題に取り組みはじめる4回目の授業では、まず「見聞きしたことのある困っている人を、ともかくたくさん書き出す」という活動にしました。

「困った人を書き出す」のは、今日一日を振り返ったり、先週一週間を振り返ったりする中で、記憶にある困っている人を事実として書き出す、正解のない取り組みです。したがって、社会課題を書き出すことよりはずっとハードルが低い。

そして、「誰かの困りごとは社会の困りごとである」という考え方からすれば、一人の困りごとを深く広く探求することは、社会課題に当事者意識をもって取り組んだり、新たな社会課題を発見したりする糸口になる大きな可能性があります。

こうして、生徒たちは「社会課題として」ではなく、「身近な困ったこと」として、社会課題に出会うことができるのです。

3.「困っている人」への意識が高まるデザイン

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

さらに困った人を書き出した後の「困った人を一人選ぶ」という活動に、「一人の困った人への意識が高まる」ようデザインが組み込まれています。

「困っている人」を付箋にひたすら書き出したあと、生徒たちは4~5名のチームとなって、最終的には一人の「助けたい人」をチームで選ぶように設計されています。

このとき、まずはチームのみんなでブレストして出した「困っている人」の付箋のなかから「助けたい人」を一人一枚ずつ選びます。

「最も助けたい人を何もないところから一人考えて書く」という行為と、「困った人リストから一人を選ぶ」という行為では、後者のほうが格段に心理的ハードルが低いにもかかわらず、「たくさんの付箋から一枚付箋を選んだ」という「体の感覚」は意外にも人間の意識に残ります。この過程で気づかぬうちに「選んだ付箋に書かれた人」への思いが徐々に蓄積されていきます。

さらに、2人ずつのメンバーがそれぞれ選んだ「助けたい人」の付箋を、VSシートというワークシートに貼り「その人をなぜ選んだのか?」ということを説明しながら勝ち残り形式で「チームで助けたい人」を一人決めていきます。

「2つのうちどちらを選ぶか?」というのは非常に単純なゲーム形式の対話なので、実際は「どちらの人をなぜ助けるべきなのか?」という知識や論理性に左右されそうなテーマの議論にもかかわらず、自然と盛り上がっていきます。

そしてその盛り上がりに乗っかって、自分がその人を選んだ理由を一生懸命に説明していくなかで「なぜ自分がその人を選んだのか?」ということの探求が始まります。

この時「どうしても助けたい!」という明確で大きな気持ちが生徒にまだなかったとしても、「その付箋に意識が向き、目についた」ということは事実であり、その事実を紐解くなかで「何が自分の琴線に触れたのか」ということを内省し徐々に言語化していく体験をします。このことはそれ自体が自分と出会いなおすきっかけとなります。

こうしたプロセスを経ることで、記憶を振り返り何の気なしに付箋に書いた「誰か」が、「自分の助けたい人」になり「チームの助けたい人」になっていくようデザインされているのです。

もちろん、自分が選んだ人がチームの中で選ばれるのは一人の生徒だけですが、自分の気持ちを探求し、考えを伝えた上で全員で選んだ「助けたい人」であれば、その人の困りごとをなんとかしたいという意欲につながります。

誰かに押し付けられた誰かや、論理性や知識が豊かである生徒が率先して決めた誰かよりも、間違いなく当事者意識をもって「その人を笑顔にする企画づくり」に取り組めるようになるのです。

4.企画検討のハードルを下げるフレームワーク

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

4回目の授業で「助けたい人」が決まったら、実際に企画づくりに向かっていきます。3回目の授業までで企画した学校周辺のテーマは、調べ学習も必要なく比較的手軽である一方、「困っている人を笑顔にする企画を考える」というのは、いくらその人への気持ちが高まったとしても難しいことです。取り組む前に萎えてしまう可能性もあります。

そこで4つ目のデザインを仕込みました。最初の3回の授業で「企画検討のフレームワーク」が獲得できるよう設計していたのです。

生徒たちは、最初の3回の授業ですでに「学校」をテーマにした企画づくりを完成させています。3回の授業では、3枚のワークシートを使って企画を完成させるのですが、これと全く同じワークシートを、「困った人を笑顔にする企画作り」でも活用するのです。

そうすることで企画検討の精神的ハードルを下げ、「最初の3回と同じようにさくっとやってみよう」という気持ちを持てるようにしました。

こうすると、「本当にちゃんと考え抜いた企画をつくり上げられるのか?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、ソーシャルチェンジでは、現在多くの企業が企画開発や商品開発に取り入れている「アジャイル型の開発」という思想を取り入れています。つまり、一度企画を完成させたあと、さらにその後の授業で企画の質を高めたり学びを深めていったりするデザインがされています。そのことは次回の記事で詳しく紹介します。

「企画検討のフレームワーク」にはもう一つのポイントがあります。フレームワークに沿って進めていくと、「困っている人を笑顔にする活動」と思って取り組んでいたものが、「社会課題解決」につながる企画となるのです。

具体的には企画検討のためのワークシートの3枚目で「そのアイディアが実現すると、どんないいことが起こりますか?」という問いを入れました。

最初の3回の授業では「学校」をテーマにした課題が与えられているため、その実現こそが活動の目的、4回目の授業からは困っている人を笑顔にすることが活動の目的になります。したがって企画づくりだけを考えたら、「その後どうなるの?」ということは必要のない問いになります。

しかし、「企画のその後」を考えることは「自分たちが考えた企画のさらなる可能性」を模索することにつながります。

ひいてはそれが、自分たちの企画の社会へのインパクトを想像することにつながり、その中で自分たちが選んだ「助けたい人」の困りごとが捉えなおされ社会課題“化”され、自分たちの取り組みも社会課題解決“化”されていくのです。

これらが、「生徒が活動に向かうモチベーションを高める4つのデザイン」です。

まとめ:小さなやる気から、大きな社会課題への意識へ

生徒の心をどのように惹きつけ、どのように学びを起こすのか。探究学習プログラム「クエストエデュケーション」に設計された学びのデザイン。 ~第1回 社会課題を解決する「ソーシャルチェンジ」。活動に向かうモチベーションを設計する~

調べ物さえも必要のない学校周辺の面白い課題に対し「ちょっとやってみるか」という小さなモチベーションが芽生え、「やってみたらできた」という体験によってそのモチベーションは、「もうちょっとやりたい」というモチベーションにつながる。

そして、活動のテーマとして困っている人を「たくさん出したい」という意欲、さらに、選んでしまった誰かを紹介し「チームの一人に選ばれたい」、「その人を何とかして助けたい」という気持ちにつながっていく。

そしてさらに「その人がおかれている社会の課題をなんとかしたい」と、より大きく本質的なポイントにモチベーションが向かい、社会課題に当事者として取り組む姿勢を醸成していくようにデザインされているのです。

次回は②繰り返しのなかで学ぶデザインという観点から、ソーシャルチェンジの「学びのデザイン」を紹介していきいます。

福島創太

早稲田大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。転職サイト「リクナビNEXT」の企画開発等、企業の中途採用に関するさまざまな業務に携わる。退社後、東京大学...

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