オンラインで他校や企業とつながる!「クエストミーティング」開催を見た社会学大学院生が感じた新たな教室の可能性

オンラインで他校や企業とつながる!「クエストミーティング」開催を見た社会学大学院生が感じた新たな教室の可能性
企業との探究学習

こんにちは、元クエストカップ全国大会大学生スタッフ、現大学院生のあやです。この度ファンライターとして記事を執筆させていただくことになりました。これから、この立場だからこそ見える新しい視点で記事をお届けできればと思いますので、よろしくお願いします。

私は、現在は大学院で社会学を専攻し、「魔法少女アニメ」の『おジャ魔女どれみ』や『プリキュア』の研究しています。5年前のクエストカップ全国大会の時にたまたま知人の紹介で参加してから、クエストに取り組む生徒や取り巻く大人たちのエネルギッシュな魅力に魅了され、それから毎年スタッフをやっています。この度、クエストファンライターとして、クエストの裏側に迫ります!

今回はじめての潜入レポートは2020年10月1日、2日に実施されたオンラインイベント「クエストミーティング」についてです。

クエストミーティングは、探究学習プログラム「クエストエデュケーション」(以下クエスト)内のイベントのひとつで、クエストを受講している各学校の代表生徒が一堂に集まり、企業人と共に学び合う場です。他校の生徒や企業人と意見を交わして対話の力を実感し、異なる文化に触れることで自らの学びを深め、探究活動のヒントを持ち帰ります。

今回プログラム内のイベントを初めて覗かせてもらったことはクエストファンの私にとって、新鮮でした。これまではクエストカップ全国大会という成果の最終発表の場でのみ、生徒たちがクエストに取り組んだ集大成を見て来た私ですが、今回クエストミーティングで生徒たちが学んでいる瞬間にも立ち会えたことで、多くの発見がありました。

また、今年度のクエストミーティングはコロナウィルスの影響により、例年のようなリアルの場での開催は出来ませんでした。しかし、むしろオンラインだからこそ生まれた、新たな学びの場があったと思います。

そのことについて、ファンの視点からレポートしたいと思います。

学校の枠にとらわれない、新しい教室のかたち

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今回のクエストミーティングは、福岡から京都、東京、新潟まで全国21校もの生徒たちと協賛企業12社の企業人がオンライン上に集いました。

本イベントは、例年地域ごとの会場に複数の学校が集まって行っており、リアルに会うことができないのを悲しむ声もありましたが、オンラインになったことによって、離れた地域に住む生徒同士も同じ場で学べる新たなチャンスにもつながったと思います。

制服も、教室も、学年も、地域も違う、「クエスト」に取り組んでいるという共通点のみを持った生徒たちが、画面いっぱいに集まっている様子は圧巻で、学校や場所を超えて教室同士がつながっているような、不思議な一体感がありました。

コロナ禍によって余儀なくされたオンライン形式ではありますが、むしろそこには、未来の教室の形があったのではないでしょうか。

従来の「ひとつの学校に、他の生徒たちと企業人が集まる」という形式では得られなかった、「学校でも会社でもない、新たな学びの場」が生まれていました。

学校コーディネーターたちのファシリテーションが生徒の魅力を引き出す

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もちろん、こうしたオンライン上での質の高い場づくりには、その場を作るファシリテーションの力が欠かせません。

教育と探求社(以下、探求社)の社員で、学校コーディネーターの岡本多永(おかもとたえ)さんのファシリテーションが、オンライン上でも冴え渡っていました。(※画面上段・中央)

少し緊張した面持ちの生徒たち、はしゃいでいる様子の生徒たち・・・あらゆる教室から何十人もの生徒たちが集まる場が、すさまじいスピードで一体感を増していくファシリテーションには私も息を飲みました。

例えば、「今日この場で、企業の人や他校のメンバーとつながってるから、みんなはもう社会とつながってるよ!いいスタートだね!」と声をかけたり、チャットに書き込みがあれば「みんな!たくさん書いてくれてありがとー!」とすかさずコメントをしたり。生徒たちが前に出た瞬間、その学びのチャンスを必ずキャッチして、上手に後押ししてくれる。その心地のいい話し方に、場のクリエイティビティも急上昇していく様子がひしひしと感じられ、改めて、クエストにおける学校コーディネーターの存在の重要性を感じました。

年一回、学びの集大成として生徒たちが企画を発表するクエストカップ全国大会。そのスタッフとして関わってきた私は、これまで学校コーディネーターの方々が学校現場でどのようなことをされているかを知りませんでした。ただ、毎年クエストカップ全国大会の場で、学校コーディネーターの皆さんが担当の学校の生徒たちに信頼され、慕われていらっしゃるのはよく見ていました。それがなぜだったのか、学校コーディネータ―の方々が生徒さんたちと関わっている様子をみて、この日、ようやくつながりました。

学校コーディネーターの皆さんは、それぞれが教育に対して並みならぬ思いを持っている、個性豊かでキラキラした方々です。「クエスト」というプログラムが、単なる教材の枠を超え、学校現場で生徒たちに変化をもたらすのは、学校コーディネーターがいてこそ実現するものだと感じました。

企業人の志が「働く」ことの価値を教えてくれる

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私が毎年スタッフとしてクエストカップ全国大会に関わるときに楽しみにしているのが、各企業の魅力あふれる企業人の方々とお会いできることです。働く人ってこんなに生き生きしているのかといつも刺激をくれる、ユニークな企業の方々との出会いは、クエストを体験している生徒たちにとどまらず、スタッフとして関わってきた私の仕事観にも大きな影響を与えてきました。

今回のクエストミーティングでは、博報堂の兎洞武揚(うどうたけあき)さんのことをご紹介させていただきます。(※画面上から2段目・中央)

今回クエストミーティングで生徒たちがチームになって取り組んだテーマは、「インターン先企業の隠れた魅力を掘り起こそう!」。生徒たちは4~5名のチームになって、 自己紹介では好きな秋の食べ物の話をしたり、HPや資料からワクワクするフレーズを探して発表し合ったりしましたが、その中の「先輩社員の話を聴こう」というワークの中で、兎洞さんに10分ほどご自身の仕事についてお話しいただく場面がありました。

その中で強調されていたのは、「博報堂は、人しかいない会社だ」ということ。土地や工場やインフラや資産を持っているわけでもない、ただ人しかいない、というのは、人が資産の会社だということ。「人だけ」ということのすごさが、兎洞さんの語る言葉で改めて浮き彫りになっていきました。

インターン先企業として博報堂を選んだ理由を生徒たちに聞くと、「クリエイティブな仕事がしたいから」という理由が多いです。このクリエイティブが、「人だけ」の現場で生まれている、というのはクリエイティブは「人の中から出てくる」ということでもあります。

兎洞さんのお話からは、”人”が持っているチカラへの絶対的信頼を感じられ、心をぐっと動かされました。

その後に続くご自身のキャリアのお話では、博報堂の中でまずマーケティング戦略の仕事を経て、次に働く人たちが幸せに働けるようにする仕事、現在は企業が利益を得つつ、社会課題にポジティブな影響をもたらす、企業の社会的責任に関する仕事をしていらっしゃる、とのことでした。そして今のその仕事について誇りを持っています、と生徒たちの前で語っていらっしゃいました。

「働く」というと、特に大学生などだと、会社に入って給料をもらうだけ、というイメージを持っていることもありますが、元来「働く」ということは社会に影響を与えることであり、人を幸せにするものなのだということを感じました。

生徒の気づき―コンタクトレンズは人の性格を明るくする

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「企業が生み出す、人の幸せ」という点で、今回のクエストミーティングで印象的だった一場面がありました。

「インターン先の企業がどんな人を幸せにしているか考えてみよう」というワークの中で、コンタクトレンズを扱う企業、メニコンのチームの生徒から出た言葉です。

それは「眼鏡からコンタクトレンズにかえると、その人の性格が明るくなる」というもの。

たしかにコンタクトレンズは時として人の性格までも変えてしまうことがあります。コンタクトレンズにしたことでこれまでより自信を持てたり、挑戦できたりする人のことが、鮮やかに浮かびます。

「視力を補正する」「眼鏡より運動がしやすい」のように、ついつい機能的な面に注目して答えがちなところですが、コンタクトレンズ自体の機能面を超えて、それがもたらす人の感情の変化に目を向けた本質的な答え。企業が作っている仕事が、人を幸せにしているのだということを端的に表した素敵な捉え方で、メニコンの先輩の方々も驚いていました。

生徒たちが企業のことを徹底的に調べ、考え、出す意見には、年齢など関係なく、新しい視点からのイノベイティブな発想がたくさんあります。

生徒たちのこうした気づきに、私のようなクエストに関わるの大学生や企業人たちは毎回ハッとさせられます。学校と社会がより密接に関わることで、生徒たちの学びは圧倒的な成長をすると思います。

実際、今回のクエストミーティングの最後の振り返りの際にチャットに書き込まれた、生徒たちからの感想には、

「オンラインで全国の同年代の方と関わり合えてすごく刺激になりました!ありがとうございました!」

「マジで社会とつながりいろんな人と話すのいい」

といった声がありました。コロナ以降の学校教育のスタンダードが、社会に開かれたオンライン上の教室になるという日も近いのかもしれません。

オンラインが可能にする社会にひらかれた学校

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これまでの日本の学校現場には、「閉鎖的」「「学校の中で学びが完結してしまっている」といった課題がしばしば言われてきました。

こうした現状に対して、クエストは16年にわたり、学校と企業を繋ぐプログラムとして、学校と社会の距離をより近づける橋渡しをしてきたのではと思っています。私が出会ってきたクエストやクエストをとりまく先生方には、「学びの場は、社会の中にこそ存在する」という確固たる想いがあったように思います。

そして、今回のクエストミーティングでは、奇しくもそんな理想が、オンライン上ににまた新しい形で姿をみせていたのではないでしょうか。学校が社会と融合した新しい教室の形がそこにはあったのです。

複数の学校と企業人が一堂に会したあのクエストミーティングの場には日本の学校が、大きく変化する可能性が詰まっていると思います。

例えば、これまで東京の高校では「今度、北海道の高校と一緒にグループワークするから」なんてことは考えられなかったわけですが、オンラインであれば頻繁に他校の生徒と意見を交わすことも一緒に授業を受けることもできます。今後クエストカップ全国大会で学校や県をまたいだチームが出場するという場合だってあり得ます。

学校外からのゲストを招いての講演会はより手軽に行えますし、教室と、実際の企業や行政の場をつなぐこともできます。学校にとっても、学校外の人にとっても、教育の場がより身近になり、ひらかれた教室になっていけば素晴らしいことこの上ないと思います。

オンラインでの学びの場は、音声や通信のトラブル、リアルの場より雑談が生まれにくい、といった課題もまだありますが、新たなフィールドで起こる教育現場の革命に期待で胸がいっぱいになる・・・いきいきと話す生徒たちや、刺激を受けて嬉しそうな企業の方々を見て、新たな教室の形に想いを馳せる一日となりました。

あや

元クエストカップ大学生スタッフ。クエストファンライター。大学院在学中で社会学を専攻。研究対象は「魔法少女アニメ」。

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