起業家コースの生徒が学んだ、アイディアを行動に移す勇気。失敗は失敗じゃない!

探究学習入門

生徒が、ハッと社会の課題を見つけた時。ポン!とアイディアを思いついた時。そんな時、生徒に実際に行動してみることの大切さに気づいてほしくても、どう伝えればいいのか難しいですよね。

そんなときは、実際に起業した方からお話いただくことが、生徒の心を動かすきっかけになるかもしれません。アイディアを形にするために、仲間を巻き込み、何度も試行錯誤し、時に失敗し…リアルな経験を共有してもらうことが、生徒たちの探求を深めていきます。

今回は、起業家コース「スモールスタート」で商品開発の体験に取り組む中高生が、大学生起業家の浅見 幸佑さんのお話を聞き、刺激を受けて学びを深めていった様子をお伝えします。

大学生起業家の浅見 幸佑さん

大学のある授業をきっかけに、活動を始めた

立教大学3年生の浅見幸佑さんは、福祉の授業をきっかけに、視覚障害があってもなくても楽しめるボードゲームの開発をされました。浅見さんは現在大学に通いつつ、一般社団法人「ビーラインドプロジェクト」の代表を務めています。

浅見さんが開発したボードゲームは、120万円ほどのクラウドファンディングに成功しており、今では2000人以上がゲームを体験しています。

浅見さんがそんな活動を始めたのは、日常生活でのある気づきがきっかけだったそうです。

浅見さん「大学一年生の時に福祉の授業を受けたんですが、視覚障害を持つ方の日常生活が、自分とは全く違うことに驚きました。例えば、視覚障害のある方は、商店街を歩く時、真ん中を歩いても端の方を歩いても、人や物にぶつかってしまい、歩くのがとても難しいんです。

さらに、僕は小さいころからゲームが大好きでよく遊んでいたのですが、『もし自分に視覚障害があったら、同じように友達が出来ていただろうか』と疑問に思いました。

そこで、『視覚障害がある人もない人も、一緒に楽しめるゲームをつくりたい』というアイディアを思いつきました。

ただ、自分一人で実行するのは大変だなと思い、興味がありそうな友達を誘ってみました。思った以上にみんな前向きで、僕よりも推進力のある子もいて、とても助けられたのを覚えています。」

100回以上の試行錯誤。アイディアを形にするために大事にしているプロセス

アイディアを思い付き、人を巻き込んで行動に移してみたわけですが、実際にはどんな風にゲーム作りを進められたのでしょうか?

浅見さん「僕がものづくりをする時に、大切にしている3つのポイントがあります。

『ひたすら体験してみる』『振り返る』『考えるだけでなく、作ってみる』です。

一つ目の『ひたすら体験してみる』は、ボードゲームがたくさん置いてあるカフェに仲間と何度も通い、様々なゲームを体験してみました。また、視覚障害に対してほとんど知識がなかったので、視覚障害を持つ方や、盲学校で働いている先生方にお話を伺いに行きました。

二つ目の『振り返る』では、ゲームを体験して感じたことを、「この要素を参考にしたいね」とか「あのゲームだったら視覚障害がある人は楽しめると思う?」など仲間内で共有します。

三つ目の『考えるだけでなく、作ってみる』では、アイディアを実際に形にするのですが、「やってみたら意外と上手くできた、できなかった」が見えてきます。今では木で作られている僕たちのボードゲームですが、試作段階だと、コンビニのプリンのカップや、段ボールを使って作っていました(笑)そのような段階の物でも、ゲームをプレイして楽しんでくださる方がいて、とても嬉しかったです。」

実際に振り返りに使っていたノート。試行錯誤の様子がありありと残っている。

ボードゲームの試作は、どれくらいの試行錯誤を重ねたのでしょうか?

浅見さん「そもそものコンセプトを大きく変更するだけでなく、細かな修正を重ねたりしたのを含めると、100回以上です。

ボードゲームの大まかなデザインが決まってからは、実際にプレイしてもらって、改善点を洗い出し、細かく何度も変えていきました」

失敗して嫌になった時に、救ってくれた言葉

それだけの回数の試行錯誤の中では、壁にぶち当たったり、嫌になりかけたこともあったそうです。

浅見さん「プロジェクトを続けていくうちに、『これもう無理なんじゃないか』とか『むずかしい!!』となることは何度もありました。

そんな時、エジソンの『100回失敗したとしても、それは失敗ではなくて、100回成功しない方法を見つけた”成功”だ』という言葉を知りました。

その言葉を聞いてからは、『失敗しても、じゃあ次やろう』というマインドができました。トライして得られる発見が、実はとても大事なのだと、中高校生の皆さんにも伝えたいです。」

ワクワクで困りごとを解決していきたい

浅見さん「現在は、ボードゲーム以外にも、視覚障害の方たちと作るミュージカルの企画を進めていたりしてます。

改めて、『他の人をワクワクさせる何かを作るって好きだな、素敵だな。』と思う毎日です。これからも、色んな困りごとを、ワクワクするような形で解決していきたいと思っています!」

生徒たちの反応 失敗への捉え方

起業家コースで商品開発を体験中の生徒たちですが、実際にアイディアを行動に移し、試行錯誤を繰り返す浅見さんに、とても刺激を受けたようです。

というのも、普段の生活では、完成された商品に溢れており、その開発のプロセスに触れる機会は中々ありませんよね。

しかし、浅見さんがボードゲームの開発中、何度も壁にぶつかりながら、100回以上の試行錯誤に取り組んだ話を聞いて、自分たちが使っている商品の裏側に費やされている膨大な時間とを知り、「世の中に何かを生み出すって、そういうことだったんだ」という実感が湧いたようです。

そしてなにより、試行錯誤の中で生れる「失敗」への捉え方に、大きな変化がありました。

例えば、失敗するとへこんでしまって、なかなか動けないでいた生徒は、「浅見さんの試行錯誤の様子を聞いて、『一度で成功なんてしないんだな』『失敗しても、違うやり方でもう一回やってみればいいんだ』って思えました」と語ります。

失敗への気持ちが軽くなったみたいですね!

使う人の立場になってみる。意見を聞いてみる。

そして、他の人に積極的に意見を聞いてみる大切さにも気づきました。

浅見さんがボードゲームをひたすら体験してみたり、盲学校に行って話を聞いてみたりしたエピソードを聞いて、アイディアは色々と考えていても、実際に使う人の立場になれていなかったと思った生徒たち。

さらに、アイディアを色んな人に「どう思う?」と意見を求めてみる気軽さも、持ってみたいそうです。普段誰かに聞く時にとても勇気がいるという生徒も、自然に他人を頼る浅見さんの姿が印象的だったようですね。

商品開発のための、さりげないヒント

また、日常生活のなかにビジネスの種を発見し、新商品の開発に取り組んでいる生徒たちですが、その探究の中では、いったい何から考えていけばいいのか、分からなくなることも多いです。

悩む生徒たちに、「違和感から始める」という浅見さんのヒントがありました。浅見さんが現在の活動を始めたのは、福祉の授業で感じた小さな違和感、もやもやがきっかけでした。アイディアに行き詰まった時には、日常で感じた違和感をヒントにしてみるのも良いかもしれません。

さらに、アイディアを形にするためには、チームメンバーを上手く巻き込んでいく力も必要になります。浅見さんの話を聞いたある生徒が、「自分が行動すると他の人も行動しやすくなるんだと思えた」と感想を述べたように、自分の意見をまず言ってみることで、他の人が触発されて、チーム全体が 動き出すきっかけにもなるかもしれないと、人を巻き込むコツも掴めました。

日常生活にも活かせる言葉たち

「失敗は失敗じゃない」「日常の違和感を大切に」「積極的に他者に意見を聞いてみる」「とりあえず作ってみる/やってみる」・・・。

初めは、起業家コースでの商品開発体験に活かすために話を聞いていた生徒たちでしたが、最後には、探究学習以外でも、これらの考えを活かしていきたいと考えるようになりました。

例えば、イベント後の文化祭や、部活動内で、実際に行動に移してみた生徒もいたようです。

さらに、埼玉、東京、栃木、福岡と、全国の中高生がイベントに集まったことで、他校の生徒とも貴重な交流ができ、「他の人はそういうふうに捉えたんだ!」という新たな気づきや、「自分も同じように感じた!」という共感にも繋げることができました。

また、生徒たちが現在考えているアイディアを共有しあう機会もあり、同世代の生徒同士で「おもしろいアイディアだね!」「これはどうして?」などのフィードバックを得たことも貴重な体験になったようです。

構想中のアイディアを共有する生徒たち。

最後に

イベントの最後は、浅見さんの温かいメッセージで締めくくられました。

浅見さん「実はこの前も、プロジェクトで全然上手くいかなかったことがあって。でも、その後『なぜ上手く行かなかったのか』を振り返ることで、『次ここを直していけばいいんだ』と前向きな気持ちになれました。どんなことでも、その『振り返る』という行為がとても大切だと思っています。皆さんも、『振り返る』ことを大事にしつつ、これからも頑張ってください!!」

最後にみんなでポーズ!

商品開発を体験し、起業家精神とスキルを学ぶ!起業家コース「スモールスタート」

フジコ

国際基督教大学4年。高校2年生の時にコーポレートアクセス部門でグランプリを受賞。大学生になった今でも、自分の人生に大きな影響を与えたクエストに関わりたい思い...

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