クラスの雰囲気がよくなり学びが生まれる。学級づくりの3つのアイデア
クラスをいい雰囲気にしていきたい、安心して発言したり、学び合えるクラスにしていきたい。
生徒たちが学び成長できることはもちろん、雰囲気のよい学級づくりをしていきたいというのは、多くの先生が思っていることではないでしょうか。
今回は、生徒たちが安心して学び合える、雰囲気のよいクラスとはどのようなクラスか、またそのような学級づくりのアイデアについてお伝えします。
はじめに「問題のないクラス」にしようとしてはいませんか?
雰囲気のいいクラスをつくっていこうと考えたときに、まず最初に、確認したいことがあります。それは、学級づくりで「「問題のないクラス」を目指してしまってはいないだろうか」ということです。
クラスがいい雰囲気で、生徒同士のトラブルがない。はじめからそんなクラスだったら、理想的なのに・・・という気持ちもよくわかりますが、だからといって最初から「問題のないクラスを目指そう」として学級づくりをしようとすると、実はあまりうまくいかないのです。うまくやりたいという気持ちは、生徒たちからみると「コントロールしようとしている」ように伝わってしまうこともあり、逆に先生に対する反発やトラブルのもとになってしまうこともあります。
では、いったいどうしたらよいのでしょうか。
それには少し視点を変えることが必要です。問題をなくそうとするのではなく、たとえば、「一人ひとりがそのままの自分でいられるような安心安全な教室」を目指してみるのはいかがでしょうか。
このように問いを変えてみるだけでも、生徒一人ひとりがどのようにしたら安心して過ごせるか、生徒がそれぞれの個性を活かして、いきいきと過ごせる教室にするにはどうすればよいのか、ということに意識が向き、アイデアが出てきやすくなるかと思います。
学級づくりとは、生徒一人ひとりの可能性が存分に発揮できる、そして相互の多様性によって刺激し合って学びがより深くなるような空間へと、クラスの土壌を耕す営みと言えます。
それぞれが多様性を認め、自分らしさを発揮していける教室であれば、結果的に雰囲気のいいクラスになっていきますし、トラブルなどがあったとしても、それを学びの契機として捉え、解決していけるような関係性に、きっとなっていくでしょう。
生徒が個性を発揮できる学級づくりの3つのアイデア
それでは、そのような前提を共有したうえで、学級づくりの具体的なアイデアを3つ、ご紹介していきます。
1.「違いを楽しむ」ワークをする
学級づくりの1つ目のアイデアは、「違いを楽しむ」ワークをすることです。
生徒にとって教室で自分らしさを出すことは、得てして勇気のいるものです。「こんなことを言ったら笑われるのではないか」「自分のキャラではないのではないか」と、ついつい自分の個性が受け入れられないことを考えてしまうというのは、大人にとってもよくわかる気持ちではないでしょうか。
生徒たちがそのままの自分を表現できるクラスにするためには、まずは「どのような個性でも受け入れられる」ということが、当たり前のこととしてクラスで共有されていることが重要です。
そこで使えるのが、「違いを楽しむ」ワークをすること。
例えば、「まるい」という言葉を聞いて、思いつくものをできる限り書いてみるというものがあります。ボールペン、CD、カメラ、りんご、みかん、お好み焼き、アンパン・・・などなど、人によってたくさんのものが出てくると思います。出したアイデアが全て一致することはありません。必ず違う意見や、自分が考えていなかったものが出てくることになります。それぞれが違うアイデアが出すことで、「まるい」のレパートリーを増やしていくことができるのです。
このような活動を行なった後に、「みんなが違うアイデアをもっているからこそ、見ている世界が広がる」という気づきへと誘います。
このように、一人ひとりの多様性を感じ、「違うことに価値がある」ことに気がつけるような活動をしていけば、自分や相手の個性を受け入れ、そして多様性を活かしていく土壌ができていくでしょう。
2. 「お互いの話をじっくり聞く」時間をつくる
学級づくりの2つ目のアイデアは、生徒同士が「お互いの話をじっくり聞く」時間をつくることです。
なんだそんなことか、と思われるかもしれませんが、私たちの日常を振り返ってみると、相手の話を全部受け止めて聞いている場面は、実はそこまで多くはありません。
「相手が自分の考えと一緒か」「課題解決のために必要な情報はどれか」という情報として聞いていたり、もしくはぼーっと聞いていてただ相槌を打ってるだけだったりしていないでしょうか。
そうした経験しかしていないと、自分が話をする時にも、「何か役に立つことを言わないと意味がないのだ」「相手が興味をもつことを言わないといけないのだ」と肩肘張って考えることになります。そうすると、自分の意見を言うことのハードルが上がってしまい、チームとして活動しても学習が深まっていかなくなってしまいます。
そこで、相手の話をじっくりと聞く経験を重ねることが必要になります。たとえば、テーマを決めて、ペアインタビューを行うのはいかがでしょうか。「昨年1年間について振り返ること」をテーマとして、その1年で相手が何を考え、感じてきたのかをインタビューしながら聞いていく、というようにして「じっくり聞く時間」を作ることができます。
ポイントとしては、相手の話の腰を折るのではなくて、どうしてそう考えたのか、そう感じたのかを、相手に寄り添って深く聞いていく、ということ。話をしている側も聞いている側も、インタビューを通して、自分でも気がついていなかったような自分の気持ちに出会い直すような時間になれば理想的です。
このように、相手の話をじっくり聞く経験、自分の話をじっくり聞いてもらえる経験をすることによって、「自分が何をいっても受け止めてもらえるのだ」ということを実感することができ、それぞれがかけがいのない存在として承認され尊重される雰囲気を醸成していくことができます。
3.「答えのない課題」に取り組む
学級づくりのための3つ目のアイデアは、「答えのない課題」に取り組むことです。
答えが想定されている課題に取り組むときは、「いかに効率よく答えを導くか」に意識が焦点化してしまいます。そこにおいては、多様な意見が出てくることは効率的ではないものとみなされ、答えを与えるために必要な情報だけを出す活動に終始してしまいかねません。多様性を認めて活かすというより、正しいか正しくないか、早いか遅いか、といった視点になりがちです。
そこで、事前に想定された答えのない課題に取り組んでみるのです。
教師も生徒も、答えがない課題に取り組むことによって、それぞれの意見に価値が認められ、自分たちにしか出せない答えを模索していくことができます。チームの中で多様な意見を出し合っていき、一つの物事を探求していくことによって、一人で考えていただけでは見えていなかった世界が見えてくることになります。
多様性の尊重が継続的に経験できることによって、チームとして学びを深めていくことの価値が根付いていくことになるでしょう。そうした意味で、答えのない課題にとりくむ探究学習は、実は深い学びを実現する学級づくりにもつながっているのです。
まとめ:多様性を担保して深い学びを実現しよう
今回は、クラスの雰囲気がよくなり学びあえる学級づくりのための3つのアイデアをお伝えしました。
今回の記事で一貫してお伝えしたかったことは、その場にいる一人ひとりが自分らしくいれることが承認され、多様性が担保された環境でこそ、雰囲気のいいクラスが形成され深い学びが実現するということです。何かのために、チームを形成するのではなく、一人ひとりの可能性を信じ承認することから始まるチームビルディングのあり方とも言えるでしょう。
最後に学級づくりにおいて、注意したいことをお伝えします。それは、学級づくりにおいて、クラスの団結に目を向けすぎないということです。一致団結して、何かに取り組んでいくことは素敵なことですが、それを求めすぎてしまうと、クラスに馴染めない子が息苦しさを感じてしまいます。また、みんなが一つのことに染まっていくことは、それぞれがもっている多様性がなくなってしまうリスクもあります。
クラスのあり方そのものも多様であっていいのではないかと思っています。それぞれが多様であること承認され、その中で居心地のよい形でクラスと関わり学びを深めていくことが大切です。一見するとふざけているだけに見えたり、沈黙が続いていたりするクラスもあるかもしれません。ですが、それぞれの多様性をどのように尊重していくのかに取り組んでいるプロセスの真っ只中だと見取って、温かく支援していきたいものです。なぜなら、最善のクラスのあり方という答えはなく、そこに集ったメンバーでその都度、よりよいクラスを作っていくことになるのですから。
それぞれの教室で、自分らしさが輝くクラスでの学びが深まっていくことを心より願っております。
※クラスで「答えのない課題」に取り組める、探究学習のテーマ実例こちら
→【実例】探究学習のテーマ16種
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