何のために仕事するんだっけ?中高生と社会人で考えた
中高生と社会人が「働くこと」を考える対話イベント「Plus ONE Session」が12月に開かれました。オンライン上に集まった中高生40名、社会人約40名がオンライン上に集まり、「働く」をいろんな角度から深めました。ここから生まれたものは?
セッション1 「私にとって、”働く”とは〇〇です」
仕事って人のため? 自分の幸せのため!?
まずは、ウォーミングアップで、初対面の緊張をほぐすためのお題を。
「昨日、自分が触れた仕事を思い出してみよう」という呼びかけに
・バスの運転手
・コンビニ店員
・お母さんの車いすを押してくれた介護の人
・燃えるゴミを収集してくれる人
生徒たちからは、自分の身近にある仕事が次々と出てきました。
その後、11のグループに分かれ、自分の思う”働く”を伝えあいました。
“働く”へのイメージの違い
あるグループの様子を覗いてみました。
生徒たちの視点は「誰かのため」「社会貢献」というものが目立ちます。
「お金を稼ぐこと」
「誰かのためにすること」
「社会をよりよくすること」
「誰かを幸せにすること」
それに対し、社会人は「自分」に寄せた視点が目立ちました。
「生活を維持するためのもの」
「あそび」
「好きなことを思い切りやること」
“遊び” “好き”という視点を受けて、生徒たちはこう語ります。
「どんな仕事をしたいかは、社会のためだけでなく、自分の幸せを考えたり大事にしてもいいんだな」
「お金を稼ぐ手段としてみていたけど、個性を生かす意味もあるなんて! 見える世界が変わった」
セッション1を終え、休憩中にチャットに書かれた感想の一部をご紹介します。
・自分の考えと人の意見って、やっぱり違くて面白い(中学生)
・働くことで自分の知的好奇心を満たすことができる!(中学生)
・自分のことを認めてくれたり、支え合える会社で働きたい!(中学生)
・大人の話ってめっちゃ面白い!(中学生)
・過去の経験が、働くこと、生きることにつながっていくんだな(中学生)
・働くことはお金を稼ぐだけでなく“成長するため”という見方もある(中学生)
・自分らしくいられる仕事がしたい(高学生)
・仕事は人のため、自分のため、どっちも大事(大人)
・働く目的が人それぞれ(高校生)
・どんな職業でも楽しいを見つけられるのかな(高校生)
・自分で考えてもいなかったことが、自分から出てきた(高校生)
・仕事をしたいかは、社会のためだけではなく、自分の幸せのため(高校生)
セッション2 「働くことを通して実現したいこと」を考える
でも、そもそも夢がないんです・・・
セッション2のお題は「働くことを通して実現したいこと」。まず40の言葉から、仕事をイメージする5つを選びます。その言葉を選んだ理由や、その言葉から広がるイメージをグループで共有しあい、「働くことを通して実現したいこと」へとイメージを膨らませていきます。
あるグループでは、生徒の一人が打ち明けた「そもそも夢がない」という言葉に、じっくり向き合いました。大人の一人が「実は僕も夢がないんだよ」とも。
大人たちも、生徒と同じ年頃だった自分を振り返ります。
「周りの人のこと、誰かのためなんて、中高校生のときは考えていなかったよ」
「大人も昔はみんな中高生の時があって、今がある。なんとかなるから思いっきり今! 今を楽しんでも大丈夫だよ!」
生徒「自分は夢とか、何になりたいとか、まだ見つかっていないけど、でも今日、自分の中で何かが変わった気はします」
別のグループでは、積極的なイメージや世界観が飛び出していました。
「みんながなりたい自分になれる社会の実現」
「いろいろなことに挑戦して、看護師の夢に向かいたい。仲間と協力して、患者さんに感謝してもらえる看護師になりたい」
「新しいこと、誰もやったことがないことをやりたい」
「自分なりのワークライフバランスを見つけて、実現していきたい」
「豊かな人生」
大人も子どもも立場を超えて、言葉が溢れていました。
セッション3 リフレクション(振り返り)
誰かに話すことで見えたもの
「働くこと」についての考えを言葉にすることを繰り返してきた参加者は、セッションの最後、振り返り(リフレクション)をしました。
司会の松本が、こう呼びかけます。
松本:この瞬間の気持ちを捉えてください。今、心にあることを話してみましょう。
発達心理学のある先生がこんなことを言ってました。ビジョンや目標は流れている川の水をバケツですくうのと同じだと。だから、今この瞬間にバケツですくった水にはこんなプランクトンが入っていたけど、もう1回すくうと、それはまったく別のものになっている可能性があるんです。
セッション2では、働くことを通して実現したいことを考えましたが、それを達成しないとダメなのかというと、私はそんなことないと思っています。それよりも、そのときそのときに描いたことは、自分に何をもたらすんだろうか、そこに意識を向けてみてください」
リフレクションで、参加者はそれぞれこう語りました。
「前職の教員時代に生徒から、ずっと子どもでいたい、なんで先生は教員なんかになったの? と聞かれました。でも今日出会った生徒さんは、こんな私の言葉からも、何かを感じてくれたり、肩の荷が下りたような形のアウトプットをしてくれて、ただ嬉しかったです」
「来年還暦を迎える年(59歳)ですが、衝撃的だったのは『やりたいことを見つけるため、仕事をするんだ』という観点。多分、僕も“そこ”にいるなっていうことを、あらためて感じています」
「学生は遊びに行ったり、自由な時間がたくさんあるイメージ。社会人は仕事がつらいとか、マイナス面のイメージがありました。今回、たくさんの社会人から仕事への熱意・信念、成功体験を聞けて、自分にとって大切なものだし、ちょっと仕事に興味が出たかなと思いました」(中学生)
「人は人だし、僕の意見はそこまで変わらないだろうと思っていました。でも、他の人の意見から自分の考えを見直すにあたって、自分は本当はこう思っているんだと気がつきました」(高校生)
「失敗を恐れず挑戦することは、仕事をする上でも人生でも大切なこと。やりたいことをやってみると新たな視点や視野を持つことにも繋がるし、人それぞれ違う価値観を認め合い尊重することはとても素敵なこと」(高校生)
「今日は様々な仕事の価値観に多く触れたことで、自分の価値観や仕事観が大きく変化した1日でした。将来、平和活動の仕事をしたいと考えているので、自分にとっての『平和』を深めていきたいです」(高校生)
「自分の働くことに対してイメージを持ってなかったし、将来何も考えてなかったのですが、そんなに焦って考える必要はないのかなと思いました。一番大事なのは、自分の感情に従って、何かに挑戦していくこと。やりたいことを見つけていくこと」(中学生)
大人、がんばれ!がんばるよ。
みんなはそのままでいい。
中高生の生徒たちにとって、「働くこと」は身近な話題ではなかったかもしれません。それでも、考えることを何度も繰り返した生徒たちに、大人のよっしーさんからエールの叫びが注がれました。
「中高生すごすぎるよ。大人がんばれ!がんばるよ。中高生のみんなは、そのままでいい」
初めてこの場で出会った仲間が語り合った3時間。葛藤があったり、言葉が出てこない時間もありました。一方で、誰かの言葉がきっかけで、自分の中で何かが変わったり、言葉にならなくても、伝えようとしたり受け止めようとしたりする時間でした。
じっくりと、
他の人の話を聞くこと。
ゆっくりと、
誰かに気持ちを話してみること。
参加者がこの時間に生まれた“何か”を、必死で掴んでいる様子が伺えました。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
今回のイベント「Plus ONE Session」を企画した教育と探求社のメンバー。
左から 関建、福島創太、松本優也。
参考:
教室内で就業体験!新しい時代のキャリア教育プログラム「インターン」
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。