生徒が解きたくなる「問い」を生徒自ら作るには?茨城県立並木中等教育学校の探究事例
「生徒が探究したくなる問いを立てられるようになるきっかけが欲しい」
「探究学習で生徒が諦めないで問いに取り組んでほしい」
「他の学校では、どのような取り組みをしているのだろう?」
総合的な探究の時間などで、探究学習に取り組んではいるものの、思うように上手くいかず悩むことはありませんか?
茨城県立並木中等教育学校の西山大吾先生も、生徒自ら解きたくなる「問い」を立てることができず、最終的にどの生徒も似たような答えを持つようになってしまい、悩んでいたそうです。
今回は、生徒一人ひとりが関心を持って取り組める問いを立てるようにどのように工夫しているのか、西山先生の探究学習の事例を紹介します!
「あきらめずに、粘り強く取り組んでほしい」
並木中等教育学校は2008年に開校した中高一貫校です。
中学校に相当する前期課程では、総合的な学習の時間として、「地域問題に根差したフィールドワーク」「Quest Education」「つくば市へ政策提言をしよう」を、グループで探究学習を行い、高等学校に相当する後期課程では「課題探究Ⅰ~Ⅲ」として、身近なところから「問い」をたて、それに対する仮説、実証実験、考察までを、指導教官(教員)のもとで一人で行っています。
茨城県立並木中等教育学校 西山大吾先生
西山先生は探究学習を行う中で、先生が問いよりも、問いに対する答えが出るかどうかを重視しすぎている、という課題を感じていました。
西山先生「生徒たちは、自分で解きたくなるような問いを上手く立てられず、課題探究の時間などで探究学習が思ったように進まずに悩んでいました。そうした中で、生徒がすぐに問いを諦めないで考え抜く粘り強さや、生徒が生徒自身で「解きたくなる問い」を立てられるようになって欲しい、といった思いが生まれました。
その時「「生徒自ら問いを立てたくなるようになる」というコンセプトの探究学習教材『Qusetion X』を知り、渡りに船だ!と活用することにしたんです」
Question Xとは?
Question Xは、日常に眠っている些細な疑問に目を向け、「問い」の面白さに気づくことを目標に開発されたプログラムです。全6コマで構成され、最初はカードゲームから始まり、最後は自らの問いを探求するというような流れになっています。
まずは“楽しく”問いを立てていく
Question Xでは、カードゲーム形式で、生徒同士で問いを立てる練習を行っていきます。
西山先生「実際にカードゲームを使って問いを出していく体験をした生徒は、その次年度以降の探究学習において、問いに対するレジリエンス力、すなわち耐久力が上がっていると感じます。
それまでは、問いを与えられても、問いを自分なりに考えられずにいる生徒もいました。しかし自分たちで問いを出したり、問いに答えたりする体験をした後は、問いを雑に扱わずに、『どうなんだろう?』と、問いとしっかり向き合う生徒が増えました。問いを立てる楽しさそのものを味わえるようになったことに加えて、『どんな問いを立ててもいい』という土壌づくりにもなっていると感じました。」
生徒自身が解きたくなる問いを生み出せる体験をしたことで、2年次以降の探究学習において問いの向き合い方が変容したと感じているそうです。
生徒が答えの“その先”に進むには?
前期課程(中学校相当)で「問いを立てる」体験をした後、後期課程(高等学校相当)ではいよいよ生徒自ら問いを立て、その問いに自ら答えを出すのと同時に、その過程を積み重ねていく活動が始まります。
西山先生「生徒自ら問いを立てるよう先生が促した場合、生徒が似たような答えを持ってしまうという課題がよくあります。その課題に直面した時、知らず知らずのうちに問いに向き合うことではなく、「その答え」をだすことに意識が向いてしまっていることに気づきました。そこで、教師が「いいね」といった承認などを簡単には行わず、決まりきった答えを提示しないことを実践するようにしました。
教員は、生徒がたてた問いとそのプロセス・答えに対して『いやいや、こうしたほうがいいんじゃない?』などといった、否定的もしくは誘導的なアドバイスはしません。代わりに、『じゃあどうしてその問いの答えが出ると思う?』と、逆に生徒に問いを投げかけていきます。すると、生徒はその問いやテーマと自然に向き合っていくのです。」
さらに、途中で行き詰ってしまう生徒にこそ、「問い」を投げていくことが大事です。
西山先生「途中で行き詰ってしまう生徒には、分岐点があります。問いを投げることで、生徒がそのテーマを諦めたり、抜け道を探したりと、次のアクションを起こせるようになります。」
生徒自身で問いを立ててみたものの、前に進めない生徒も少なくありません。西山先生含め、茨城県立並木中等教育学校では、そういった時こそ、突っ込みという名の「問い」を投げていくそうです。
生徒の探究事例「憧れの有名歌手本人に、私がなりたい!」
ここで、1人の生徒の事例をご紹介します。
この生徒は、とある有名歌手が大好きでたまらず、「どうやったら私自身がその歌手になれるのか」という問いを設定しました。
この生徒の担当のゼミの教員は、「じゃあどうするの?」という問いを生徒共に立て続けていきました。すると、最終的には206ページにわたる、品詞・歌詞・コード・メロディの観点から分析を行った最終論文が完成したのです。
品詞では他の歌手と比べてどのような品詞がどのくらい使用されているのか、歌詞やコード分析では実際に自作してみる、これらを踏まえてメロディを作成していきました。
それだけではありません。これでは「どうやったら私自身がその歌手になれるのか」という問いに答えられていないと考えたため、その生徒はさらに編曲をし、ミュージックビデオまで作成しました。
生徒が自ら立てた問いを、生徒も先生も信じることが出来たから、このように探究することが出来たのではないでしょうか。
まとめ
今回は、「生徒が解きたくなる『問い』を、生徒自ら作るためには?」と題し、並木中等教育学校の西山先生の実践を紹介しました。
西山先生は、生徒が立てる問いに先生が容易く承認することも、直ぐに否定もすることなく、生徒を信じて「じゃあどうするの?」というように、生徒に逆に問い返すことで、問いを生徒ともに立てていくことを大切にしていました。
また、生徒自ら解きたくなる問いを立てていくためには、まずは「問いを立てる練習」が必要と考え、実際に生徒たちが体験できるようにしています。問いを立てる練習の中で、問いを立てることで否定されない安心感が生まれ、問いを立てる文化が醸成されていくそうです。
ぜひ、今回の西山先生の実践をもとに、生徒との関わりや探究学習で活かしてみてくださいね。
生徒が自ら「問い」を持とうとする姿勢を育てて、問いからはじまる学びを増やしませんか?→問いを探究する探究学習プログラム『Question X』
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